射出成形を用いた連続成形では、条件を一定に設定しても、思わぬ成形不良が発生することがあります。量産時に発生する不良は、単なる条件設定のミスだけでなく、様々な要因が複雑に絡み合っています。
この記事では、なぜ安定した条件下でも成形不良が避けられないのか、考えられるケースを解説し、それぞれに対する対策を提案します。
1. 材料特性の変動
原因
樹脂材料のバッチ差
原料の樹脂には、同じグレードであっても製造ロットによる微妙な違いがあります。これによって、溶融時の流動性や冷却時の収縮率が変動し、成形不良を引き起こす要因になります
樹脂の吸湿
一部の樹脂(ナイロンなど)は吸湿性があり、空気中の湿気を吸収します。材料が吸湿すると、射出成形時にガスが発生しやすくなり、ショートショットやガス焼けなどの不良を招きます。
対策
成形前に使用する材料ごとに吸湿管理を徹底し、ドライヤーで事前乾燥処理を行う
ロットごとの材料特性のばらつきを把握し、条件の微調整を行うためのデータ収集を行う。
2. 金型の変化と摩耗
原因
金型の温度変動
長時間の連続成形では、金型内部の温度が時間とともに変化しやすく、冷却効率や収縮バランスが崩れます。その結果、寸法変動や変形といった不良が発生します。
そしてそれらは製品形状に高さがあるほど顕著に起こります。
金型の摩耗や汚れ
連続成形を行うことで、金型のゲート部分や流動経路が摩耗し、樹脂の流れが乱れることがあります。また、ガスや油分が金型内に堆積し、製品表面に傷やガス焼けを引き起こします。
対策
金型の温度をリアルタイムで監視し、冷却系統のメンテナンスを定期的に実施。
成形サイクルごとに金型の清掃を行い、定期的なメンテナンスを計画的に実施することが重要。
3. 設備の劣化と調整不良
原因
射出成形機の劣化
射出成形機自体も、連続成形により部品が摩耗したり、油圧システムの安定性が失われることで、微妙なズレが生じます。これにより射出速度や圧力が変動し、成形不良が発生しやすくなります。
センサーや制御系の誤作動
射出機のセンサーや制御システムが劣化・誤作動することで、設定した成形条件と実際の動作に差が生じることがあります。特に圧力や温度の誤差は成形品の品質に大きな影響を与えます。
対策
定期的な設備の点検・メンテナンスを実施し、必要に応じて射出機や関連機器のキャリブレーション(校正)を行う。
予知保全を取り入れ、設備の状態をモニタリングしながら異常を事前に検知する。
4. 外部環境の変化
原因
工場内の湿度や温度の変化
特に季節の変わり目や昼夜の温度変化により、工場内の温度や湿度が大きく変動します。これにより、樹脂材料や金型温度が影響を受け、成形品に不具合が出やすくなります。
空気中のホコリや異物
環境の変化に伴い、空気中に浮遊するホコリや異物が成形品に付着し、外観不良や機能的な問題を引き起こすこともあります。
対策
工場内の温湿度管理を徹底し、安定した環境で成形を行うようにする。
クリーンルームやフィルターシステムを導入し、異物混入を防止する。
5. 人為的ミス
原因
成形条件の調整ミス
連続成形中、オペレーターが条件を変更する際に、誤って過剰に調整してしまうケースがあります。これにより、次の成形サイクルで不良品が発生することがあります。
保守・清掃の怠り
金型や機械のメンテナンスや清掃が不十分だと、摩耗や汚れが積み重なり、成形不良の原因になります。
対策
成形条件の変更は慎重に行い、過去の実績データを基にした調整を行う。また、複数のオペレーター間での条件共有を徹底し、ミスを防ぐ。
メンテナンス作業を定期的に行い、清掃のチェックリストを設けて確認作業を徹底する。
まとめ
連続成形において成形不良が避けられない理由は、材料や金型の変動、設備の劣化、外部環境の影響、そして人為的ミスといった多岐にわたる要因が存在するためです。これらの要因を理解し、適切な対策を講じることで、不良率を大幅に減少させることが可能です。
安定した成形品質を維持するためには、日々のメンテナンスや設備のチェック、そしてデータに基づいた微調整が欠かせません。ぜひこの記事で紹介した対策を参考に、より高品質な成形を目指してみてください!
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