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量産技術:ロボット活用によるプライマー・エプト貼りの自動化

近年、自動車部品製造の現場では、作業効率の向上と品質の安定化が強く求められています。その中で、射出成形品に対するプライマー塗布およびエプトシール貼り付けの工程は、従来から人手に依存していたため、品質のバラツキや工数の肥大化が課題となっていました。これらの問題に対して、自動化を導入することで大幅な改善を実現した事例を紹介します。


背景と課題の明確化

対象となったのは、車両向け内装部品で、月産約2万台という高い生産量が要求される部品です。従来の生産体制では以下のような工程で製造されていました。


  1. プライマーをスティックで手塗

  2. エプトシールを手貼

  3. 専用機によるクリップ挿入、検査、梱包

これらの工程では最大5人の作業者が必要であり、作業者の熟練度により品質が左右される傾向がありました。そこで、省人化と品質安定化を目的として自動化への取り組みが開始されました。


工数分析と構想

工程分析の結果、人による作業時間は以下の通りでした。

  • プライマー塗布+エプト貼り:65.6秒

  • クリップ挿入+検査・梱包:12.8秒

このままでは1セットの製造に約80秒が必要であり、大量生産には不向きです。そこで、プライマー塗布とエプト貼りをロボットにより自動化し、人の作業は部品の脱着のみとする新構想が策定されました。目標サイクルタイムは25秒以内。最終的には、3名体制(2シフト+時間延長)での運用を前提としています。


プライマー塗布工程の自動化

初期トライと課題

プライマーの塗布方法については、スティック、ローラー、ハケなど様々な手法を想定して試験が行われましたが、含有量のバラツキにより安定した塗布が困難であるという課題に直面しました。


スプレーバルブの採用

そこで、スプレーバルブによる塗布方式を採用。

スプレーバルブの画像

株式会社サンエイテック様の協力により、ラボでの塗布テストを実施し、液圧・ノズルとの距離・塗布速度などの条件を最適化しました。

液圧の違いによる塗布量の違い

結果として、以下の設定で良好な塗布品質が確認されました。

  • 使用ロボット:FANUC LR MATE200iD/7L

  • スプレーバルブ:SV91(ノズル径28H8)

  • 塗布条件:液圧0.02MPa、速度150mm/sec、クリアランス15mm

ロボットによる塗布サイクルタイムは15秒で、目標の25秒以内を達成しました。


エプト貼り工程の自動化

当初は双腕ロボットによる貼付けが検討されましたが、グリップ保持力の不足(最大2kg)とコスト面(1基600万円)が課題となり、最終的にFANUC製ロボット2基を採用しました。

ロボットはエプトを保持し、成形品に対して高精度で貼り付けを行います。


工程全体のフロー

  1. 成形品をプライマー塗布装置へセット

  2. 自動でプライマー塗布

  3. エプト貼り装置へ自動搬送・貼付け

  4. クリップ挿入装置へセットし、挿入と検査・梱包

この一連の自動工程により、サイクルタイムは目標を上回る20秒を達成。従来の5人から2人へと要員削減が可能になり、年間で1200万円のコスト削減に成功しました。


問題点とその対策

プライマー固化問題

ノズル先端に固化物が溜まることで塗布不良が発生。これに対しては、定期的なノズル清掃のルールを策定し、塗布終了後にはスポンジ台で待機させることで固化を防止する運用としました。

エプト供給・チャッキングの問題

供給装置からのエプト蛇行やロボットのチャックミスが発生。フェルト材をロボット爪先端に取り付けることで保持力を向上させ、対策としました。

チャッキングミス対策

導入コストと投資回収

装置の導入費用は以下の通りです。

  • プライマー塗布装置:約695万円

  • エプト貼り装置:約1548万円

  • クリップ挿入装置:約210万円

  • 合計:約2454万円

人員削減による年間1200万円のコスト削減を考慮すれば、約2年で初期投資の回収が可能です。


成果と今後の展望

今回の取り組みにより、ロボットを活用したプライマー塗布およびエプト貼りの自動化技術の道が開けました。量産における品質の安定性とサイクルタイムの改善に加え、作業者の負担軽減と省人化という面でも大きな成果となっています。

一方で、エプト貼付けの「浮き」や位置ズレなど、改善の余地も残っており、現在もメカトロ部門で改良設計が進行中です。

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