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【改善事例】2色成形部品の薄バリ発生不良対策

はじめに

製造現場において「成形工程」と「組立工程」の同期化は、生産効率と品質向上を同時に実現する上で非常に重要な課題です。とりわけ射出成形品では、金型設計や成形条件のわずかな不具合が、組立工程に重大な影響を及ぼし、不良品の流出につながることが少なくありません。本稿では、車両用外装部品を題材に、実際に行った不良対策とその成果について紹介します。


背景と課題認識

車両用外装部品

弊社 群馬工場では、車両用外装部品の二色成形製品(ASA+エラストマー)において、成形不良(薄バリ混入、バリ発生)が多発していました。

薄バリの混入不良
バリ発生不良

これは「ワースト3製品」として社内で扱われるほどの品質課題を抱えていました。特に、成形不良が組立工程へ持ち込まれるリスクが高く、現場では品質保証上の大きな懸念となっていました。


不良の実態と原因分析

主な不具合内容

  • 薄バリ混入:製品不良の半数以上を占める重大要因。

  • バリ発生による手直し:不良扱いにはならないが、バリ除去に専任者が必要となり、1名分の工数が浪費されていた。


▸薄バリ混入

不良発生のメカニズム

薄バリ混入の主因は、二色目のTPE成形に用いられたトンネルゲート構造にありました。

薄バリ不良のメカニズム

タブ部に薄バリが発生し、場合によってはタブ自体が取れてしまう。この残渣が次ショットで意匠面に押し出され、不良品を生むという悪循環が確認されました。また、樹脂圧力によって入れ子と角突き出しの隙間に樹脂が入り込み、徐々に金型が潰れてアンダーカット状態を形成していたことも判明しました


対策とトライアルの経緯

対策1:入れ子交換

潰れた面を修復する代わりに、新しい入れ子を製作。しかし、1日(1200ショット)後には再びバリが発生。根本解決には至りませんでした。

対策2:窒化処理

入れ子の強度を高める目的で窒化処理を実施。初期状態では良好だったものの、こちらも1200ショット後にバリ再発。

対策3:バリの「逃げ場」を設ける

薄バリの対策

発想を転換し、あえて入れ子にバリが外へ排出されるよう手加工を実施。これにより、入れ子内にカスが残らず、ゲートバリ混入が激減。タブ詰まりは発生したが、定期的な清掃で解消可能なレベルとなりました。


▸バリの発生

成形条件の最適化

本製品の金型は4キャビ構造(多数個取り)となっています。そのため、ゲートバランスの微妙なズレにより「あるキャビでヒケ、別のキャビでバリ」という相反する不良が同時発生していました。特にチョコ停後の再立ち上げではバリが顕著でした。

  • ゲート径修正:効果はあったが条件幅が狭く、安定生産には不十分。

  • 樹脂温度低下トライ:メーカー推奨190~230℃の範囲で温度を下げた結果、バリ発生が抑制され、圧力を上げてもヒケが出にくくなる条件幅を確保。結果として、不良率は0.7%まで低減しました

    バリ発生のための対策

成果

品質・工数面の改善

  • バリ手直し作業が完全に不要となり、1.5人分の工数削減

  • 実績としては3.5人分、年間1260万円のコスト削減に結び付きました。

工程同期化の実現

不良流出リスクが低減したことで、これまで必要だった「中間在庫・輸送・再検査」といった無駄工程を排除し、成形と組立を直結できる体制を確立しました。これにより、工程リードタイム短縮と在庫削減も同時に実現しました。


今後の展開

  • 自動化装置の導入検討

    部品フィーダーによるクリップ自動挿入機構。ただしコスト増や設備停止リスクもあり、投資効果を慎重に検討中。

  • トレー方式による簡易同期化

    より低コストで実現可能だが、前工程に準備作業が残る。

いずれも「工程の一体化」と「現場負荷の軽減」を狙った取り組みであり、今後も改善活動は継続されます。


まとめと考察

本事例から得られる最大の学びは、

  1. 不良対策は現象を抑え込むだけでは不十分であり、根本的な原因分析と工程全体を見渡した最適化が不可欠であること。

  2. 条件調整と金型対策の両輪で改善を進めることで、組立工程との同期化という生産革新につながること。

  3. 適正条件の見極めは机上解析や過去データに依存せず、実機検証を通じて導き出すことの重要性。

本改善活動を通じ、群馬工場では「不良率の大幅低減」と「成形・組立工程の同期化」を実現しました。今後も再発防止の取り組みを継続しつつ、自動化や設備改良を視野に入れた新たな挑戦が期待されます

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