プラスチックは絶縁性、成形加工性に優れており、電気材料として幅広く使用されている。
用途は強電用と弱電用とに大別される。弱電用材料としてエレクトロニクス部品に使う時は高周波絶縁性が優れていなければならない。その為には誘電率(イプシロン)と誘電正接(tan デルタ)は小さいほうが良い。一方強電用材料として低周波絶縁に使用する場合は誘電特性が多少悪くても絶縁抵抗、絶縁破壊強さ、耐アーク性、耐トラッキング性に優れた材料が要望される。
以下の4項目について解説する。
A 電気絶縁性
B 誘電特性
C 電気的性質の劣化 D 帯電性
A-1 電気絶縁性
電気を通さない物質を一般に絶縁体という。2つの電極の間に絶縁体をはさみ直流電圧をかけると
極僅かの電流が流れていることが分かる。これを漏れ電流という。この漏れ電流に対する抵抗を「絶縁抵抗」という。1cm角の立方体の相対する面の間の抵抗、「体積固有抵抗」で定義される。この数値が大きいほど良絶縁体である。なお、表面のみを流れる電流に対する
抵抗を「表面抵抗」と呼ぶ。両抵抗の測定原理を図①に示す。
A-2 絶縁破壊、絶縁体力
2本の電極の間に絶縁体を挟み電圧を徐々に上げていくと、最初は微少電流が流れるだけだが、電圧が非常に高くなると電流が急激に増加し絶縁体の一部が溶けて穴が開いたり炭化して破壊し、絶縁性が無くなってしまう。この現象を「絶縁破壊」という。絶縁材料が耐えうる最大の電圧を試料の単位厚さ当たりに表した数値を「絶縁破壊強さ」という。
B 誘電特性
絶縁体に電圧をかけると、これに対応して絶縁体内に正及び負の電荷が発生する。この現象を誘電現象という。絶縁体はこの現象を引き起こすので誘電体とも呼ばれる。絶縁材料を高い周波数領域で使う場合に非常に重要な性質である。誘電率と誘電正接tanσとで表される。この数値が大きい材料は高周波回路に使用中発熱して電力損失が大きくなる。材料の劣化を起こしたり絶縁不良事故の原因ともなる。
C-1 耐アーク性
耐電圧の高いプラスチックでも高電圧で長時間使用していると部分放電により劣化が起こる。耐アーク性は電極間に交流電圧を段階的に加えて放電を発生させ、何秒間で焼けて絶縁性を失うかを測定する。絶縁板の表面でアーク放電が起こった場合、どの程度まで耐えられるかの目安となるものでプラスチックの種類により大きな差がある。
C-2 2耐トラッキング性
アーク放電により表面が熱劣化され、絶縁体表面に沿って炭化した慟電路ができる。この現象をトラッキングと言い、その起こり難さを耐トラッキング性という。
D 帯電性
プラスチックは摩擦や接触により帯電しやすい。空気中のゴミを吸引して製品を汚したり、火花放電を起こし爆発のきっかけをつくったりすることがある。湿気のある空気中では漏電が速やかに起こるので帯電量は少なくなる。一般に抵抗値の高いものほど集塵汚染の程度が強い。大体の目安として10の15乗オーム以上のものは極めて汚染されやすく、10の10乗以下ではあまり汚染が起こらない。帯電防止グレード選定の1つの基準となる。
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