前回の続きになります。
残留応力による歪み以外で変形に影響のあるものはゲートの形式寸法と位置、点数である。
図1 ゲート位置と数による変形
図1は円盤形状の成形品変形とゲート位置、数の関連を示したものである。少し誇張して書いたが、円形のものはこのような変形の傾向があることをあらかじめ予想した設計が必要であろう。
図2 長方形板のゲート位置と変形
図2は長方形平板の場合である。このおようにゲート位置の位置に影響された変形もあるので成形品の変形が問題となりそうなものについてはゲート位置の決定も慎重にしなければならない。
成形条件とかゲート位置変更などで成形品の変形を防止しようと努力しても最終的に変形が防止できなかった場合は、「冷やしがね」などの矯正治具に成形直後にはめこんで矯正することになり、手間がかかるので予定された製造コスト内にいれることが困難になる。
矯正治具への着脱は自動化が困難なので、成形の自動化については変形は非常にやっかいなトラブルとなる。
したがって変形は成形品設計時に最も注意すべきものと言える。成形品の残留応力は射出成形プロセスの本質からどうしても避けられないものであり、前もって十分検討して形状の設計とリブなどの補強によってできるだけ変形のないものにしたい。
写真1 箱の変形防止例
写真1はリブをふんだんにつかって変形防止した例である。アンダーカットがかなりあるので周囲四面スライドコアになっているが、これくらい徹底すると変形はほとんど見られない
図3 箱の変形防止補強例
また、図3は上記した箱の各種補強例となる。このような箱はビール瓶のコンテナなどに見られる。最近のものは非常に巧妙に出来ており、身近にあるものであるので興味を持って見るようにしたい。
図3の補強例は箱側面の補強例である。なるべくアンダーカットを作らないようにすることが金型費を低くすることになるが、デザイン要求と使用条件をよく考慮して補強リブ形状を決めるべきである。リブによる補強は非常に効果的で、特にプラスチック製品の場合一体成形であるから金型を加工すればこの形は出来る。しかし、やたらにリブをつけてもよいというものではなく、なるべくスライド機構を避けて金型を単純化し、原因となるひけを生じさせないよう考慮することが肝要である。
😀