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“その寸法、なぜ出ない?”からの脱却 ― 流動パターンで解き明かす最適収縮率の決め方

はじめに

射出成形における金型設計では、「一発で狙い寸法を出す」ことが理想とされます。しかし実際の現場では、初回成形後に型修正を繰り返し、量産立ち上げまでに時間を要するケースも少なくありません。その要因として、反り、成形収縮率の設定、補正方法の考え方など、複数の課題が複雑に絡み合っているのが実情です

特に寸法精度が厳しい製品では、「どの寸法を優先的に成立させるべきか」という基準寸法の考え方が不明確なまま金型補正を行い、結果として修正回数が増えてしまう例も見受けられます。本記事では、流動パターンに着目した収縮率算出手法と、解析結果の新たな活用方法について紹介します。


従来手法が抱える課題

従来手法が抱える課題

一般的に成形収縮率は、収縮測定用の平板を用いて評価されます。平板においては、ゲートからの流動方向および流動直交方向それぞれで収縮率を測定し、その平均値や代表値を設計に反映する方法が広く用いられてきました。

製品形状による樹脂の流動状態の違い

しかし、この方法では実際の製品形状における樹脂流動状態が十分に反映されないという問題があります。製品では、放射状流れや偏流、合流など、平板とは異なる流動パターンが発生します。その結果、平板で得られた収縮率をそのまま適用すると、基準寸法が狙い通りに出ず、再修正が必要になるケースが生じていました。


流動パターンに着目した新たなアプローチ

本検討では、「基準となる寸法を優先的に成立させる」ことを目的に、流動パターンを考慮した3種類の収縮率算出用金型を製作しました。

流動パターンによる収縮率の違い

それぞれゲート位置や形状を変え、

  • 平行流れ

  • 放射状流れ(中央ゲート)

  • 放射状流れ(側面ゲート)

といった異なる流動状態を意図的に作り出しています。


まず流動解析およびショートショット成形により、各金型で想定通りの流動パターンが形成されていることを確認しました。そのうえで、実成形品から収縮率を算出し、従来の平板測定値との比較を行っています


収縮量と反り量を分けて考える

解析結果を金型補正に適用する際、従来は「解析で得られた変形量=そのまま補正量」として扱われることが多くありました。しかし、この変形量には収縮による寸法変化反りによる変形が混在しています。

収縮量と反り量の考え方

本検討では、解析結果から補正量を

  • 収縮量

  • 反り量

に分解して考える手法を導入しました。例えば、ある測定点において補正量1.263mmのうち、反り量が0.121mmであることが分かれば、残りを純粋な収縮量として整理できます。これにより、製品寸法からより妥当な収縮率を算出することが可能になります


実験結果と検証

実験結果と検証

流動パターン別に算出した収縮率を比較した結果、放射状流れを持つ平板で得られた収縮率が、実成形品の収縮挙動に最も近いことが確認されました。

実測による補正量との比較

さらに、「同じ流動パターンであれば、他の部位の補正量も予測できるのではないか」という仮説のもと検証を実施しています。収縮率0.0077を用いて別部位の補正量を算出したところ、実測値との差は0.084mmに収まり、十分に実用的な精度であることが示されました


まとめ

今回の検討から、以下の点が明らかになりました。

  1. 流動パターンを考慮した収縮率算出金型は、実成形品に近い収縮率を得るための有効なツールである

  2. 解析結果を「収縮量」と「反り量」に分けて扱うことで、金型補正の精度が向上する

  3. 基準寸法を優先的に成立させる設計アプローチにより、型修正回数の削減が期待できる

解析技術や設備が高度化する一方で、その「使い方」次第で結果は大きく変わります。流動パターンという視点を取り入れることで、解析結果をより実践的に活用し、金型立ち上げのスピードアップにつなげることが可能になります。

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