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射出成形品の物性が場所によって変わるのは何故か?主な5つの原因をご紹介

7 分前
読了時間: 7分

はじめに

プラスチック製品を設計するとき、「この材料は弾性率が○○MPaだから、この程度の荷重には耐えられるだろう」と考えることがあります。しかし、実際の射出成形品では、同じ製品の中でも場所によって強度や剛性、収縮率などの物性が異なる場合があることをご存じでしょうか?

成形品の場所によって物性が変わることを示すイラスト

例えば、ガラス繊維強化樹脂を使用した部品では、樹脂が流れた方向と直角方向で剛性が変わることがあります。また、肉厚や冷却条件の違いによって、製品内部と表面で材料の状態が異なることもあります。

このような物性のばらつきは、製品の変形や破損、寸法精度などに影響を与えるため、製品設計や成形条件を検討するうえで重要なポイントです。

今回は、射出成形品の物性が場所によって変化する主な5つの原因について、分かりやすく解説します。


1. 樹脂の流動による分子配向

射出成形では、加熱して溶かした樹脂を金型内へ高速で流し込みます。このとき、樹脂に含まれる高分子の分子鎖は、流れの影響を受けて特定の方向に並ぶことがあります。これを「分子配向」と呼びます。

分子配向による物性の違い

分子鎖が流れ方向に沿って配向すると、方向によって材料の変形しやすさや強度が異なる場合があります。つまり、同じ材料であっても、樹脂の流れ方向と、それに直角な方向とでは物性に差が生じる可能性があるのです。

このように、方向によって物性が異なる性質を「異方性」と呼びます。

例えば、薄肉の板状部品では、樹脂が流れやすい方向と流れにくい方向で、収縮や変形の程度が異なることがあります。

特に、流動による分子配向の影響は、樹脂の種類や分子構造、成形条件によって変化します。製品の寸法精度や反りを検討するときには、樹脂の流れ方も重要な要素となります。


2. ガラス繊維などの充填材の配向

ガラス繊維強化樹脂では、分子配向に加えて、ガラス繊維の向きも物性を左右します。

ガラス繊維は樹脂よりも剛性が高く、樹脂に混ぜることで製品の強度や剛性を高める役割を持っています。しかし、成形時に繊維がどの方向を向くかによって、補強効果が変化します

ガラス繊維配向による物性の違い

例えば、樹脂の流れ方向にガラス繊維が多く配向している場合、その方向では高い剛性が得られる一方、直角方向では相対的に剛性が低くなることがあります。

また、製品の表面付近と内部では、樹脂の流動状態が異なるため、ガラス繊維の配向も異なる場合があります。

このような繊維配向の違いは、次のような物性に影響します。

  • 弾性率や曲げ剛性

  • 引張強度や破壊挙動

  • 成形収縮率

  • 線膨張係数

特に、ガラス繊維を多く含むPA、PBT、PPなどの材料では、繊維配向を考慮することが重要です。材料カタログに記載された物性値だけでは、実際の成形品の場所ごとの特性を十分に表現できない場合があります。


3. 冷却速度や金型温度の違い

射出成形では、金型に充填された樹脂が冷えて固まることで製品が形成されます。しかし、製品全体が同じ速度で冷却されるわけではありません。

スキン層、コア層による物性の違い

一般的に、金型表面に接しているスキン層の樹脂は冷却が速く、肉厚部の内部は冷却に時間がかかります。また、金型内の冷却水路の配置や金型温度によっても、場所ごとの冷却条件は変化します。

この冷却速度の違いは、樹脂内部の構造や残留応力に影響します。

例えば、PPやPA、PBTなどの結晶性樹脂では、冷却条件によって結晶化の進み方が変わることがあります。結晶化の程度が変化すると、剛性や収縮率、耐熱性などの物性にも影響が及びます。

さらに、冷却時には樹脂が収縮しようとしますが、場所によって冷却や収縮の進み方が異なると、製品内部に応力が残る場合があります。これを「残留応力」と呼びます。

残留応力は、成形直後には目立たなくても、時間の経過や温度変化によって変形や割れの原因になることがあります。

そのため、製品の肉厚設計や金型温度、冷却水路の設計は、物性の均一性を確保するうえで重要です。


4. 結晶化度の違い

樹脂には、分子構造の違いによって「結晶性樹脂」と「非晶性樹脂」があります。

PP、PA、PBTなどは結晶性樹脂に分類され、冷却・固化する過程で分子鎖の一部が規則的に並んだ結晶構造を形成します。一方、PCやABSなどは一般に非晶性樹脂に分類されます。

結晶性樹脂では、成形時の温度や冷却速度、保圧などによって結晶化の進み方が変わります。そのため、同じ製品の中でも結晶化度に差が生じる場合があります。

一般的に、結晶化度が高くなると、剛性や耐熱性、密度などが変化し、成形収縮率も大きくなる傾向があります。ただし、実際の変化は材料の種類や結晶構造、成形条件によって異なります。

例えば、厚肉部と薄肉部で冷却条件が異なる場合、それぞれの場所で結晶化の状態が変わり、寸法や機械的特性に差が生じることがあります。

このような現象を理解することは、製品の反りや寸法精度を予測するうえでも重要です。

なお、非晶性樹脂でも、分子配向や残留応力などによって物性が場所ごとに変化する可能性があります。結晶化度だけが物性差の原因ではない点に注意が必要です。


5. ウェルドラインや保圧の違い

射出成形では、樹脂が金型内を流れる途中で分岐し、再び合流することがあります。この合流部分にできる線状の跡を「ウェルドライン」と呼びます。

ウエルドライン発生による物性低下の例

ウェルドライン付近では、合流した樹脂同士が十分に融着しない場合や、ガラス繊維が合流面に沿って配向する場合があり、局所的に強度が低下することがあります。

その結果、製品全体としては十分な強度を持っていても、ウェルドライン付近から割れが発生するケースがあります。

また、射出成形では、樹脂を充填した後に圧力を加える「保圧」という工程があります。保圧は、冷却に伴う樹脂の収縮を補う重要な工程です。

しかし、ゲートから離れた場所や、樹脂の流動抵抗が大きい場所では、圧力が十分に伝わらないことがあります。その結果、場所によって密度や収縮率に差が生じたり、条件によってはボイドなどの内部欠陥が発生したりする可能性があります。

このように、樹脂の合流状態や保圧の伝わり方も、製品内部の物性や強度を左右する重要な要因です。


6. 物性の場所による違いを考慮するには?

ここまで紹介したように、射出成形品の物性は、材料の種類だけでなく、流動状態、繊維配向、冷却条件、結晶化、保圧など、さまざまな要因によって変化します。

では、こうした物性差を製品設計にどのように反映すればよいのでしょうか?

重要なのは、材料カタログに記載された物性値をそのまま製品全体に適用するだけでなく、実際の成形状態を考慮することです。

例えば、次のような方法が考えられます。

① 成形品の場所ごとに物性を評価する

必要に応じて、樹脂の流れ方向と直角方向、ウェルドライン付近などから試験片を採取し、強度や剛性などを比較します。実際の成形品から採取した試験片を評価することで、成形履歴の影響を把握しやすくなります。

② 成形条件と製品品質の関係を確認する

樹脂温度、金型温度、射出速度、保圧、冷却時間などを変えたときに、物性や寸法がどのように変化するかを確認します。成形条件の最適化によって、物性のばらつきを抑えられる場合があります。

③ CAE解析を活用する

射出成形CAEでは、樹脂の流動、温度分布、繊維配向、収縮や反りなどを予測できます。また、解析結果を構造解析に連携することで、成形によって生じる場所ごとの特性の違いを考慮した強度・剛性評価が可能になる場合があります。

ただし、予測精度は材料データや解析モデル、成形条件の設定などに左右されます。重要な部品では、実際の成形品による評価と組み合わせることが大切です。


まとめ

射出成形品の物性が場所によって変化する主な原因は、次の5つです。

  1. 樹脂の流動による分子配向

  2. ガラス繊維などの充填材の配向

  3. 冷却速度や金型温度の違い

  4. 結晶化度の違い

  5. ウェルドラインや保圧の違い

これらの要因が組み合わさることで、同じ材料を使用していても、製品の場所によって強度、剛性、収縮率などが異なる場合があります。

特に、ガラス繊維強化樹脂や寸法精度が求められる製品では、材料そのものの物性だけでなく、成形によって生じる物性差を考慮することが重要です。

「材料の物性値」と「実際の成形品の物性」は、必ずしも同じではありません。

射出成形品の品質や信頼性を高めるためには、材料選定、製品形状、成形条件、CAE解析を組み合わせ、成形品全体の特性を理解することが大切です。

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