スマートメーター(電力用メーター)の製品開発 ~ハイブリッドスライド機構を用いた量産性の改善~
- SANKO GOSEI
- 11 時間前
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1.はじめに
近年、電力インフラの高度化に伴い、スマートメーターの導入が急速に進んでいる。

特に2014年の省エネ法改正以降、日本国内では2025年までに全世帯への導入が計画されており、その市場規模は約300億円、総導入数は約7,800万台に達すると見込まれている。
このような大規模需要に対応するためには、高品質かつ安定した量産体制の構築が不可欠である。本記事では、電力用スマートメーターの中核部品であるT-BLOCKの製品開発において、量産性向上を実現した「ハイブリッドスライド機構」の技術的ポイントについて解説する。
2.開発の背景と初期課題
本開発は2011年、電力会社向けスマートメーターの引き合いを契機としてスタートした。初期段階では、熱硬化性樹脂(乾式プリミックス)を用いた射出成形による製品化が検討された。

対象製品であるT-BLOCKは、
大型かつ厚肉構造
インサート部品を含む複雑形状
高い絶縁性能が要求される
といった特徴を持ち、従来の量産実績が少ない難易度の高い製品であった。
まず課題となったのは、成形機能力の適合性である。計算上は200tonクラスの射出成形機で対応可能と判断されたが、顧客の不安を払拭するため、実機による検証が必要であった。
そこで、成形能力確認用のテスト型を製作し、実際の成形試験を実施。

その結果、理論通りの成形が可能であることを実証し、量産への信頼性を確保した。

3.設計支援による一体化と新たな課題
量産化に向けては、部品点数削減と組立性向上を目的に、従来分割構造であったT-BLOCKのLOWERとUPPERを一体化する設計提案が採用された。

この一体化により、
部品点数削減
組立工数削減
品質安定化
といったメリットが得られたが、一方で新たな課題も発生した。
さらにコストダウン要求により、材料は熱硬化性樹脂から熱可塑性樹脂(ポリカーボネート)へ変更されることとなった。
この材料変更により、収縮率の違いが大きな問題となる。
4.熱可塑化による成形トラブル
熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂と比較して収縮率が大きく、成形後の製品がスライド部に強く食い付く現象が発生した。

具体的には、
スライドから製品が離れない
離型時に変形が発生
成形不能状態
といった重大な量産トラブルが発生した。
従来の油圧スライドのみでは、この問題を解決することができず、新たな金型機構の開発が必要となった。
5.ハイブリッドスライド機構の開発
この課題を解決するために考案されたのが、ハイブリッドスライド機構である。
本機構は、
アンギュラピン(機械式スライド)
油圧スライド
を組み合わせた構造となっている。

■ 動作原理
① 型開と同時にアンギュラピンにより一部スライドを先行動作② その後、油圧スライドで全体を引き抜く
この「2段階スライド動作」により、以下の効果が得られる。
収縮による食い付きの緩和
離型抵抗の低減
スライド間のバランス最適化
さらに、S型アンギュラ機構を採用することで、スライドの動作タイミングを最適化し、より安定した離型を実現している。
6.量産性改善の成果
ハイブリッドスライド機構の導入により、量産性は飛躍的に向上した。
主な成果は以下の通りである。
■ 成形サイクルの短縮
改善前:成形不能 → 65秒
改善後:48秒→ 17秒の短縮を実現
■ 品質改善
離型不良の大幅低減
製品変形の解消
■ 生産安定性向上
スライド動作の安定化
トラブルレス量産の実現
これにより、スマートメーター部品の大規模量産に対応可能な金型仕様が確立された。
7.量産展開と今後の展望
本技術により、30A・60A・120Aシリーズの複数製品において量産が開始され、月間数万~十万個規模の生産体制が構築された。
今後もスマートメーターは、
定期交換需要(年間約190万台)
インフラ更新需要
により安定した市場が見込まれている。
そのため、さらなる競争力強化には、
金型構造の最適化
成形サイクル短縮
コストダウン
が重要となる。
8.まとめ
本開発において重要であったのは、単なる成形対応ではなく、
製品形状
材料特性
金型構造
を一体で最適化する設計思想である。
特にハイブリッドスライド機構は、「収縮による離型問題」という量産現場特有の課題に対し、機構設計で解決した好例といえる。
今後も、製品形状から潜在的な問題を予測し、量産トラブルを未然に防ぐ金型技術の提案が、製造業における競争力の鍵となるだろう。






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