射出成形機は製品の成形方法、必要スペックにより最適な成形機を選定する必要がある
今回は選定に必要な成形機8要素をそれぞれ紹介する
①型締力
型締力とは金型を閉じる力の最大値であり、一般に(ton)で表される
②成形品の投影面積
投影面積とは型締装置の移動方向に対して直角な面に投影した時の面積を表す
下図の製品で破線部の方向を型締め装置の移動方向とした場合、投影面積は
次のようになる
③成形機の必要型締力ー型締力[ton]、成形面積[cm2]
金型を締め付ける力の最大値と成形可能な最大の投影面積をいう。金型を開こうとする
材料圧の作用に対する必要型締力換算の目安として次式を示す
F=a・Pm・(n・A+B)/100
F:成形機の必要型締力[tf] a:安全係数(一般に1.1~1.2)[-] Pm:金型内平均材料圧力[kgf/cm2]
n:成形品の取り数 A:成形品1個当りの投影面積[cm2] B:ランナーなどの投影面積[cm2]
※1:実際の射出圧力Pは金型内に充填される過程で圧力降下があるためPmと一致しない
※2:金型内平均材料圧力Pmは材料の種類によって異なる、また成形品のデザイン
寸法精度、品質要求度(ひけの大小など)によっても変化する
※3:その他射出成形機選定のポイントとして、成形品の体積、金型の大きさ、構造、
型開閉ストロークなどがあり、成形機仕様との兼ね合いから上記で算出される
型締め力より上クラスの成形機が必要となる場合がある。
④最大型開き距離(デイライト)、最大・最小型厚、型締ストローク
金型取り付け関係寸法(直圧式)
金型取り付け寸法(トグル式)
2プレート金型(ダイレクトスプルーの場合)に必要な型開閉ストロークとダイプレート間隔
3プレート金型(ピンポイントスプルーの場合)に必要な型開閉ストロークとダイプレート間隔
⑤射出容積(射出容量)
最大ストロークで射出される時の射出容積である。理論射出容積とも言われ次式で計算
される。立法センチメートル(cm3)で表示される
理論上は上記の式で算出されるが、実際にはスクリュー径の0.7~3倍の値をストロークとして計算するのが一般的とされている。また、エンプラではスクリュー径を0.7~2倍した値をストロークとして計算される。
最小ストロークをスクリュー径の0.7倍としているのは、成形機の制御プログラムに対して
油圧等が反応できる限界が一般的にスクリュー径の0.7倍と言われるためである。
また、エンプラの最大ストロークがスクリュー径の2倍の理由として、材料の成形温度が比較的高く、(樹脂音が高い)多くの熱量を必要とするためと言われる。
スクリューの2倍以上の射出容積で成形するとシルバーストリーク、ショートショット等が発生しやすい。
エンプラの射出容積計算例を以下に示す。
スクリュー径・・・φ4の射出容量
スクリュー径の断面積=π×4^2/4=12.56cm2
最小ストローク=4×0.7=2.8
最大ストローク=4×2=8
射出容積では
最小射出容積=12.56cm2×2.8=35.16
最大射出容積=12.56cm2×8=100.48
となり、最終的には35.16以上100.48以下がこのスクリューの射出容積となる
⑥射出圧力
射出圧力とはスクリュー先端部に発生する最大圧力(kgf/cm2)をいう。
成形に必要な圧力は製品の形状、金型の構造によって大きく変化するが、汎用樹脂は低めで
エンプラでは比較的高い圧力を必要とする。以下に必要圧力の目安を示す。
・汎用プラスチックーーー1,200kgf/cm2以上
・汎用エンプラーーーーー1,500kgf/cm2以上
・スーパーエンプラーーー2,000kgf/cm2以上
一般的な傾向として、成形材料の荷重たわみ温度(熱変形温度)と成形温度が高くなると
必要圧力も高くなる。
なお、上記の数値はスクリュー後部に加える設定圧力である。しかし途中部分での圧力
損失が大きいので、実際のノズル部分の樹脂圧はこれらの数値の50~60%と言われている。
正確には圧力センサーを取り付けて調べる必要がある。
⑦射出率
ノズルから射出される成形材料の速度を示し、単位時間に流出する最大容積で表す。
スクリューの直径をD(cm)、射出速度をv(cm/sec)、射出容積をV(cm3)、射出時間をt(sec)、
射出シリンダーの直径をD0(cm)、作動油流量をQo(cm3/sec)とすると射出率Q(cm3/sec)は
次式で表す
Q=(πD2/4)・v Q=V/t、またはQ=Q0・D2/Do2
⑧可塑化能力(kg/hr)
加熱シリンダーが毎時どの位の量の成形材料を可塑化するかを示す。実際には可塑化性能は射出量や背圧、スクリュー回転数等に関連し、特に精密ハイサイクル成形では材料温度の均一化と計量精度に影響を及ぼすことがある。
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