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射出成形金型におけるパーティングライン(PL)の基礎と決定手順

射出成形金型の設計において、パーティングライン(以下、PL)は製品の品質、成形性、金型の製作コストに直結する重要な要素です。本記事では、PLの基本的な役割と、最適なPLを決定するための考え方について解説します。


パーティングライン(PL)とは?

パーティングラインの解説

パーティングラインとは、射出成形金型において、固定側(金型のキャビ側)と可動側(コア側)が分かれる境界線を指します。成形品の表面に線として現れるため、外観品質にも影響します。また、PLは金型構造を決定する起点ともなり、設計工程において非常に重要な役割を担います。


PLの基本的な役割

  1. 金型の開閉方向(型抜き方向)を明確にする 

    PLは基本的に型抜き方向(通常Z軸方向)に対して垂直な位置に設けられます。適切なPLの設定により、成形品の取り出しがスムーズになります。

  2. アンダーカットの有無を判断する基準となる 

    アンダーカットの解説

    アンダーカットとは、型抜き方向に対して抜けない形状のことを指します。PLの位置によりアンダーカットの範囲が変わるため、PLはアンダーカットの最小化に直結します。

  3. 成形品の外観品質に影響を与える

    PLの位置が不適切だと、製品の目立つ外観面にラインが現れ、意匠性が損なわれる可能性があります。PLは見えにくい位置、あるいは目立たない面に配置するのが一般的です。


パーティングラインを決定する際の基本手順

1. 型抜き方向(離型方向)の決定

PLの設定にはまず、成形品の型抜き方向を明確にする必要があります。通常はZ軸方向が多いですが、形状や外観面に応じて最適な方向を選びます。

2. アンダーカットの確認

型抜き方向を仮定した状態で、アンダーカット部位をチェックします。CADソフトなどの自動検出機能を利用することで、迅速に確認可能です。

3. PL候補の設定と評価

PLの候補ラインを複数設定し、それぞれに対して以下の観点から評価を行います:

  • アンダーカット量の最小化

  • PLが目立たない位置にあるか

  • スライド機構やリフターが必要になるか

  • 加工や研磨の難易度はどうか

  • 金型の構造がシンプルに保てるか

4. 最適なPLの決定

評価結果をもとに、最も成形性・外観性・コスト効率のバランスが取れたラインを最終的なPLとして決定します。


実務におけるポイントと注意点

  • 外観面への配慮 

    パーティングラインの設定方法

    外観重視の製品(自動車内装部品、家電カバーなど)では、PLが視認されない箇所へ設けることが求められます。デザインと成形性の両立が求められるため、製品設計段階からPLの想定が重要です。

  • 分割面の平坦性 

    分割面が複雑になると、金型加工の難易度が上がり、型締め不良やバリの原因になります。できるだけ平坦かつシンプルな分割面が理想です。

  • エジェクション構造との整合性 

    パーティングラインの設定方法②

    PLとエジェクタ(突き出し)構造が連動することで、成形品の取り出し効率が向上します。コア側にPLを寄せてエジェクタの設計を容易にするケースも多く見られます。


最近の設計支援技術

近年では、3D CADやCAEツールの進化により、PLの候補を自動提案する機能や、アンダーカットの可視化が可能になってきています。これにより、設計者の経験に頼らずとも、合理的なPLの選定が行えるようになりつつあります。


まとめ

パーティングラインの設定は、射出成形金型設計における最も重要な初期工程の一つです。アンダーカットの最小化、成形品の外観性、金型構造の単純化といった観点から最適な位置を選定することで、高品質かつ効率的な金型が実現できます。

特に近年の製品では外観品質への要求が高まっているため、PLの設計段階から外観評価やCAEによる検証を組み込むことが、金型トラブルの防止に直結します。経験だけでなく、ツールを活用した合理的なPL決定を心がけましょう。

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