プラスチック部品の親水性を向上させる方法
- SANKO GOSEI
- 8月7日
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親水性プラスチックの開発の背景
弊社では「ウイズコロナ・ポストコロナ」の医療ビジネスの拡大に向けた取り組みを行っています。
今後、医療分野での検査ニーズが拡大して検査用の樹脂部品の市場拡大が見込まれます。そこで要求されるのが樹脂部品の親水性です。汎用樹脂の多くは疎水性ですが、親水性になれば静電気が発生しにくくなり、ゴミや汚れが付きにくくなります。
また、防曇効果や、抗菌、防カビにも効果があります。
従来の樹脂の親水化には、親水剤の塗布や、コロナ放電や溶剤により樹脂表面を活性化する方法がありますが、コストが高く効果も長続きしません。
そこで、低コストでありながら親水効果の高い方法を開発することにしました。
親水の定義

通常、水は表面張力によって丸い水滴になります。物の表面が水とくっ付きやすくなれば、水滴が広がります。
明確な定義は無いようですが、一般的にその接触角が10~40°の状態を親水
90°~150°の状態を撥水、150°~160°以上を超撥水と定義されているようです。
親水化技術の調査と現状
従来、油脂系・樹脂系、ガラス系と呼ばれる有機成分が配合されたコーティングが開発されて来ましたが、親水・防汚機能、耐久性は十分ではありませんでした。
100%無機質のガラスコーティングが出てくると親水性が向上しましたが、ガラス被膜を定着するためのコーティング方法や、定着方法については、不明な点が多く、一般的にプラスチックには、ガラスコーティングが出来ないと言われていました。
ガラス系コーティングはナノレベルの二酸化ケイ素を含むポリマーのコーティング剤が無機表面と有機表面にそれぞれ化学的な結合をするとともに、ガラス成分が被着面の凹凸に入り込むことで機械的なアンカー効果で定着します。
しかし、ポリマー成分を含むため変色や耐久性に劣り、親水効果も長続きしないのが課題でした。
無機ガラスコーティング方法の検討
純粋な二酸化シリカの表面は親水性であることが知られていますので、樹脂の表面に無機質のガラス被膜を作れば親水性になります。

これまで半導体の成膜方法としてポリシラザンを使ったガラス被膜が知られていますが、取扱いが難しくコストも高いため一般には利用されていません。
そこで、特殊セラミックから作るホウ酸シリカのイオン水を使うことで、安価にガラス被膜を作る方法を考えました。
樹脂表面の親水性テスト
樹脂表面の親水性を比較するために市販の親水、撥水のコーティング剤を含めて6種類の
試料で濡れ性、浸透性について試験を行いました。
(試験材料はポリカーボネート)



浸透性試験


試験結果のまとめ
無機ガラス100%の親水コーティングは樹脂に定着できないと考えられていましたが、シリカイオン水の塗布方法を工夫することで、ガラス系のコーティングと同等の親水性を発現できる結果が得られた。










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