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なぜガラス繊維を入れると成形品の収縮が抑えられるのか?GF強化樹脂の「収縮」と「繊維配向」の関係をわかりやすく解説

射出成形において、成形品の寸法精度や反りを考えるうえで重要な現象の一つが「成形収縮」です。

溶融状態の樹脂を金型内へ射出し、冷却・固化させると、樹脂は温度低下に伴って体積が減少します。その結果、金型寸法よりも成形品の寸法が小さくなります。これが一般に「成形収縮」と呼ばれる現象です。

しかし、樹脂にガラス繊維(GF:Glass Fiber)を添加すると、無強化樹脂と比較して成形収縮率は大きく変化します。さらに重要なのは、GF強化樹脂では単純に「全体の収縮が小さくなる」だけではなく、ガラス繊維がどの方向に配向しているかによって、収縮率が方向ごとに大きく異なることです。

今回は、ガラス繊維を添加することでなぜ成形品の収縮が抑えられるのか、その基本的なメカニズムをわかりやすく解説します。


そもそも樹脂はなぜ収縮するのか?

まず、ガラス繊維を含まない樹脂がなぜ収縮するのかを考えてみましょう。

射出成形では、樹脂は高温で溶融された状態で金型内に充填されます。その後、金型によって冷却されることで固化し、成形品となります。

成形品の冷却前後の体積変化イメージ

このとき樹脂は温度が下がることで体積が減少します。これは、材料が温度変化によって伸び縮みする「熱収縮」が原因の一つです。

また、PPなどの結晶性樹脂では、冷却中に結晶化が進むことによる体積変化も成形収縮に大きく影響します。つまり、実際の成形収縮は単純な熱膨張・熱収縮だけではなく、材料の結晶化や圧力、保圧、金型温度など、複数の要因によって決まります。

特に無強化のPPでは、冷却による熱収縮と結晶化に伴う体積収縮が重なり、比較的大きな成形収縮が発生します。


ガラス繊維は樹脂に比べてほとんど伸び縮みしない

ここで重要になるのが、PPとガラス繊維の線膨張係数の違いです。

一般的な目安として

PPの線膨張係数は約100~150×10⁻⁶/℃程度であるのに対し、

ガラス繊維の繊維長手方向の線膨張係数は約5×10⁻⁶/℃程度です。

つまり、PPはガラス繊維と比較して、温度変化による伸び縮みが20倍前後大きい材料と考えることができます。

例えば、PPとガラス繊維が同じ温度差だけ冷却された場合、PPは大きく縮もうとしますが、ガラス繊維はほとんど縮みません。

ここで、PPの中にガラス繊維が入っていることを考えてみましょう。

PPだけであれば、冷却によって自由に縮むことができます。しかし、PPとガラス繊維は複合材料として一体化しているため、樹脂だけが自由に縮むことはできません。

樹脂が縮もうとしても、内部に存在する「ほとんど縮まないガラス繊維」がその変形を拘束します。

これが、ガラス繊維を添加することで成形収縮が抑えられる大きな理由です。

イメージとしては、ガラス繊維が成形品の内部に「骨組み」のように存在し、縮もうとする樹脂を支えている状態と考えるとわかりやすいでしょう。


特に繊維の長手方向では収縮が大きく抑えられる

ただし、ガラス繊維による収縮抑制効果は、すべての方向で同じではありません。

射出成形では、溶融樹脂が金型内を流れる際、その流動によってガラス繊維が一定方向に並びやすくなります。例えば、樹脂が奥から手前へ流れる場合、多くのガラス繊維は流動方向に沿って配向します。

流動方向によるガラス繊維の配向イメージ

この方向では、ガラス繊維の長手方向が樹脂の収縮方向と一致しやすいです。

ガラス繊維は長手方向に高い剛性を持っており、さらに温度変化による伸び縮みも非常に小さいため、樹脂が縮もうとする力を強く拘束します。

流動方向による収縮率の違い1

その結果、

繊維配向方向 → 収縮率が小さい

という傾向になります。

一方、流動直交方向では繊維の長手方向による強い拘束効果が働きにくくなります。

そのため、

繊維直交方向 → 配向方向より収縮率が大きい

という異方性が発生します。

GF強化樹脂では一般的に、

繊維配向方向の収縮率 < 繊維直交方向の収縮率

という関係が見られます。

流動方向による収縮率の差

繊維直交方向でも無強化樹脂より収縮が小さくなる理由

「ガラス繊維は直交方向には並んでいないのだから、直交方向の収縮は無強化樹脂と同じではないか?」と思うかもしれません。

しかし、実際には繊維直交方向でも、無強化樹脂より収縮が小さくなるケースが多く見られます。

その理由の一つは、成形品全体の中で、ガラス繊維が収縮する樹脂の量を減らしているためです。

流動方向による収縮率の違い2

例えば、樹脂100%の材料では、材料全体が樹脂で構成されています。一方、GF30%の材料では、材料の一部がガラス繊維に置き換わっています。

ガラス繊維自体は樹脂のように大きく収縮しないため、材料全体として見れば、収縮する成分の割合が減少します。

また、ガラス繊維と樹脂の界面では、繊維が周囲の樹脂の変形を拘束します。直交方向では繊維長手方向ほど強い拘束ではありませんが、繊維の存在そのものが樹脂の自由な変形を抑制する効果があります。

そのため、同じ樹脂系で同じ条件に近い比較を行った場合、

繊維配向方向 < 繊維直交方向 < 無強化樹脂

という関係になるケースがあります。

ただし、この関係はすべての材料、すべての成形条件で必ず成立するわけではありません。樹脂の種類、GF含有率、結晶化度、成形条件、測定方法などによって結果は変化します。

そのため、実際の材料選定や金型設計では、各材料メーカーが公開している成形収縮率データを確認することが重要です。


収縮率の「方向差」が反りを発生させる

GF強化樹脂で特に注意したいのが、収縮率そのものだけではなく、方向による収縮率の差です。

例えば、

  • 繊維配向方向:収縮率0.3%

  • 繊維直交方向:収縮率1.0%

だったとします。

この場合、同じ成形品の中でも、方向によって縮む量が大きく異なります。

さらに、実際の成形品ではガラス繊維の配向状態は製品全体で均一ではありません。

ゲート付近では流動方向に沿って強く配向していても、流動が分岐する部分や肉厚が変化する部分、リブやボスの周辺、ウェルド部などでは繊維の向きが変化します。

つまり、製品内部では場所ごとに異なる方向へガラス繊維が配向しており、それに伴って収縮率も場所ごとに変化します。

さらに、成形品の表面側と内部でも繊維配向は異なります。表面近くでは金型壁面の影響を受け、中央部とは異なる配向状態になることがあります。

このような「場所による収縮差」や「表裏による収縮差」が発生すると、成形品には内部応力が生じ、結果として反りが発生します。

つまり、GF強化樹脂では、

収縮率が小さい=必ず反りにくい

とは限りません。

むしろ、全体の収縮率が小さくても、方向ごとの収縮差が大きければ、大きな反りが発生する可能性があります。


ゲート位置も繊維配向と収縮を左右する

射出成形における繊維配向は、樹脂の流れによって決まります。

そのため、ゲート位置を変更すると、製品内部の樹脂流動パターンが変化し、ガラス繊維の配向方向も変化します。

例えば、同じ製品でも、

  • 片側から充填する

  • 中央から充填する

  • 複数ゲートで充填する

といった違いによって、繊維配向の分布は大きく変化します。

これは、単純に「樹脂がどこからどこへ流れるか」が変わるためです。

そして繊維配向が変われば、収縮率の方向性も変化します。

そのため、GF強化樹脂の反り対策を考える際には、製品形状だけではなく、

「どこから樹脂を流すか」

というゲート設計が非常に重要になります。


まとめ

ガラス繊維を添加すると成形品の収縮が抑えられる主な理由は、樹脂とガラス繊維の熱的・機械的性質が大きく異なるためです。

PPなどの樹脂は冷却によって大きく収縮しようとします。一方、ガラス繊維は線膨張係数が非常に小さく、温度が変化してもほとんど伸び縮みしません。

そのため、樹脂の中に存在するガラス繊維が「骨組み」のような役割を果たし、縮もうとする樹脂を拘束します。

特に繊維が配向している方向では拘束効果が大きく、

繊維配向方向 → 収縮が小さい繊維直交方向 → 配向方向より収縮が大きい

という異方性が発生します。

さらに、成形品の場所によって繊維配向が異なれば、場所ごとに収縮率も異なります。この収縮差が、GF強化樹脂における反りの大きな原因となります。

GF強化樹脂を使用した射出成形では、単に「収縮率が何%か」だけを見るのではなく、

① 繊維がどの方向に配向するのか

② 流動方向と直交方向でどの程度収縮率が異なるのか

③ 製品内で繊維配向がどのように変化するのか

まで考えることが重要です。

ガラス繊維は、成形品の強度や剛性を高めるだけではありません。同時に、樹脂の収縮を抑制し、製品の寸法変化や反りに大きな影響を与える存在です。

GF強化樹脂の成形を安定させるためには、「ガラス繊維が入っている」という事実だけでなく、「金型内でガラス繊維がどの方向に並んでいるのか」まで意識することが、寸法精度と反りを理解するための重要なポイントになります。

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