【検証実験】水上置換法による金型内気体量の測定
- SANKO GOSEI
- 14 時間前
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はじめに
昨今、環境への配慮から市場回収リサイクル材料の使用量を増やす動きがある。
しかしリサイクル材料は成形時の熱履歴と混入物の影響により分解ガスがバージン材料に比べ多く出る傾向にある。そのため、従来の型設計でリサイクル材料の成形を行うとガス焼け・ショート等の成形不良が発生しやすくなる。
本実験では、PPのバージン材、リサイクル材料でそれぞれ成形時にどの位ガスが発生しているか、水上置換法で気体の捕集を行い、差を確認できないか検証を行った。
【検証方法】
・成形品

基本肉厚2mmの平板形状 一部肉厚が0.5mmと薄くなっている。
体積はゲートを含むと10.6cm3 (10.6cc)
・材料
日本ポリプロ株式会社 BC03B (PP) :本記事ではバージンPPと記載
家電+車両由来のリサイクルPP :本記事では市場再生PP02と記載
車両由来のリサイクルPP :本記事では市場再生PP04と記載

・成形条件
バージンPPで成形不良が出ない条件を設定し、射出速度、保圧等の条件を決定した。
・金型
キャビティ側にガス抜き入れ子(SG-WIND)が3カ所設置されている。

この3カ所はそれぞれ金型外への排気口へ繋がっている。
金型外への排気口とホースを接続しホースから出た気体はシリンダー内に溜められるようにした
連続で10ショット分の気体を捕集し体積を比較する

【測定結果】

気体の体積を比較した結果
最も多かったのは市場再生PP02で次に市場再生PP04だった。
発生した気体の成分については現在調査中ではあるが、市場再生PPの方がバージンPPに比べ多い傾向が分かった。
本来であれば、10.6cc×10ショット=106ccが基準の体積となるはずだったが
バージンPP、市場再生PPいずれも基準よりも少ない結果となった。
【気体発生の様子】
下記の動画は実際に気体を捕集している様子である成形サイクル(射出)のタイミングとリンクして気体が発生している。
【考察】
・捕集した気体が基準の体積(106cc)よりも小さい
ホース内の気体の滞留、金型の合わせ面(PL)、センサー穴等より気体が逃げた可能性がある。しかし3種類の材料については同日、同条件にて成形を行っているので、気体が逃げた量に関してはいずれも同じ量と考える。
・PP以外の材料でも同様の結果が得られるのか
➡今回はPPで実験を行ったが、これがPA6やPPS等バージンでもガス焼けが発生しやすい材料の場合どうなるか、次回、材料を変更し、検証を行う。
・入れ子による気体捕集量に差はあるのか
➡SG-WINDはスリット状に穴が開いているので気体の排気性能は優れているが、これがポーラス構造のガス抜きの場合、排気性能が落ちることでSG-WINDよりも気体を捕集できない可能性がある。次回、入れ子を変更し検証を行う。