PPS成形品のバリ取り設備のコスト改善
- SANKO GOSEI
- 4月16日
- 読了時間: 3分

PPS(ポリフェニレンサルファイド)は高性能エンプラの中でもクセが強い素材でして、バリ(フラッシュ)が発生しやすいのには、以下の理由があります。
✅ PPSでバリが出やすい理由:
低粘度で流動性が高い PPSは比較的低粘度でサラサラ流れるタイプの樹脂です。 この「流れの良さ」が仇となり、金型の隙間から樹脂が漏れ出しやすい=バリが出やすい、という現象につながります。
成形温度が高い PPSの成形温度は通常**300~330℃**程度とかなり高温です。 この高温により、金型も熱膨張しやすく、合わせ面にわずかな隙間が生じることがあります。結果、そこからバリが発生しやすくなります。
ガス抜けが不十分 PPSはガスが多く出やすい樹脂でもあります。 ガス抜きがうまくいかないと、内部圧が上がってバリが出やすくなるケースもあります。
…と、製造業泣かせの材料ではありますが近年、自動車部品にも多く採用されるには以下の理由があります。
✅ PPSが自動車部品に選ばれる理由
1. 高耐熱性(熱にめっぽう強い!)
PPSは連続使用温度で**200~240℃**くらいに耐えられます。
EVやハイブリッド車ではモーターやインバータ周辺の温度が高くなりがちですが
PPSなら「アツい現場」でも平気な顔して働きます。
★用例:モーター絶縁部品、インバータ周辺のコネクタなど
2. 優れた寸法安定性(まっすぐピシッと)
吸水性がめちゃくちゃ低く、寸法変化がほとんど起きません。
エンジンルームや車室内の湿気・温度変化の中でも、パーツの「反り」や「歪み」
が最小限に抑えられます。
3. 耐薬品性・耐油性(ケミカルアタックに強い)
PPSはオイル、クーラント、燃料などの化学物質に対して非常に強いです。
つまり、「オイルまみれ」でも「腐食なし!」ということで
パワートレイン系部品でも大活躍。
4. 難燃性が高い(自然と自己消火)
PPSは**自己消火性(UL94 V-0)**を持っていて、添加剤なしでも難燃。
EVの高電圧系やコネクタ周りで「燃えにくい材料」として重宝されてます。
5. 軽量化ニーズに応える(アルミの代替も)
金属部品の代替として、軽量化による燃費向上・CO₂削減に貢献。
グラスファイバー等を混合することで更に剛性を上げることができ
アルミダイカストからPPSへの置き換え事例もあります。
今回は自社が取組んでいるPPS樹脂成形品のバリ取り工程の改善事例をご紹介します。

バリ取りの方法ですが、一般的に自動バリ取り機というとショットブラストを使うブラスト機になります。サイクルも早くできますし、ショットするメディアの変更である程度融通もききます。お客様の方でもよく使用されているので同等品質を保証できるという利点もあります。
しかし、ブラスト機は高価であり生産数と見合わない場合は製造コスト増加の要因となってしまいます…
そこでブラスト機を使用する以外の方法として
ナイロンブラシをエアリューターに取り付け、バリ処理を実施しました。

しかし、回転の調整やブラシの硬さがマッチせず、製品まで削れてしまいました

これではバリ処理は出来ても外観不良となってしまいます。
そこでエアリューターよりも回転数の少ない電動ドリルに変更、更にナイロンブラシの径と粗さを変更しました。(1500rpm~)

これにより、作業時間は長くなりますが、製品面を傷付けずバリ処理を行うことが出来ます
これらの実験結果より、バリ処理を行う設備の使用を以下に決定しました。
★工具回転数:1500回転以上で可変できるもの
★工具 :320番ナイロンブラシ 内径用Φ50 外径用Φ63
★ロボット :社内遊休設備を利用

ワークを掴んだロボットがバリ発生面を回転するブラシに当てます。こうすることで
人の手を介さずバリ処理を自動で行うことが出来ます。
今回のロボットは遊休設備を使用しましたので高品質かつ低コストでバリ処理を実施することが出来ました!
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