CAE:リブ形状による変形量・応力値の違い
- SANKO GOSEI
- 8月29日
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製品設計において強度不足が課題となった場合、設計者は様々な補強策を検討する。その代表的な手法の一つが「リブ(補強筋)」の追加である。リブは、比較的少ない材料追加で剛性を向上させることができるため、軽量化と強度確保を両立させるうえで極めて有効な設計要素である。しかし、リブと一口に言ってもその形状は多岐にわたり、三角、四角、六角(ハニカム)など様々である。どの形状を選択するかは設計者のノウハウに依存する部分が大きく、CAE(Computer Aided Engineering)を用いた定量的な検証が非常に有効となる。
今回の検討では、100cm²の正方形の板に対して、外周長を6cmで揃えた三角リブ、四角リブ、六角リブをそれぞれ配置し、肉厚を1mmで統一した条件下で比較を行った。材料物性にはCAEソフトに内蔵されているポリエチレンのデータを使用し、荷重条件として「曲げ剛性」と「捩じり剛性」の二種類を設定している。これにより、各リブ形状がどの程度の応力分布と変形挙動を示すのかを数値的に把握することが可能となった。


曲げ剛性における比較

まず曲げ荷重を与えた場合の解析結果を整理する。三角リブでは最大応力15.1MPa、最大変形量4.77mmとなった。四角リブは最大応力15.0MPa、最大変形量4.73mmとほぼ同等の性能を示している。一方で六角リブは最大応力19.5MPa、最大変形量7.64mmと、他の二形状に比べて明らかに剛性が劣る結果となった。すなわち、曲げに対しては三角リブと四角リブが有効であり、六角リブは不利であることが明確となった。
捩じり剛性における比較

続いて捩じり荷重を与えた場合の結果を確認する。三角リブは最大応力15.2MPa、最大変形量2.06mmと非常に高い剛性を示した。四角リブは最大応力27.6MPa、最大変形量6.35mm、六角リブは最大応力27.8MPa、最大変形量5.80mmであり、両者ともに三角リブに比べると応力値が高く変形量も大きい。つまり、捩じりに関しても三角リブが最も優れた結果を示している。
総合評価
以上の結果を整理すると、六角リブ(ハニカムリブ)は一見すると複合材料の接着構造などにも応用される有効な形状に思えるが、この条件下においては三角や四角のリブに比べて明らかに性能が劣る。特に曲げ剛性に関しては変形量が大きく、応力集中も高いため、剛性向上の観点からは適切とは言い難い。一方で三角リブは曲げ・捩じり双方の荷重条件で優れた特性を発揮しており、製品の変形抑制や耐久性向上において極めて有効であることが確認された。四角リブも曲げに対しては有効であるが、捩じりに対しては三角リブに劣るため、総合的には三角リブの方が有利といえる。
設計への示唆
この検討結果から得られる知見として、リブ設計においては「形状選択が応力値と変形量に直結する」という点が挙げられる。単純にリブを追加するだけではなく、荷重条件に応じて最適な形状を選択することが重要である。例えば、製品が曲げ荷重を強く受ける環境にある場合には三角リブや四角リブを選定することが有効であり、特に捩じり剛性を必要とする用途では三角リブが推奨される。一方、六角リブは軽量化や見た目の均一性を重視する場面では有効かもしれないが、今回の条件下では必ずしも高剛性を発揮しない点に留意すべきである。
また、リブの設計は単に剛性強化だけでなく、成形性やガス抜き性、金型の加工難易度などとも密接に関わってくる。そのため、CAEで得られる数値評価を一つの指標としつつ、実際の製品条件や生産性とのバランスを踏まえて最適化を図ることが求められる。特に射出成形製品においては、リブの厚みが肉厚部を形成するとヒケや反りの原因となるため、厚みを一定以下に抑えながら補強効果を最大化する工夫が欠かせない。
まとめ
今回の比較から、リブ形状の違いによる変形量・応力値の差は明確に現れることが確認された。三角リブは曲げ・捩じり双方で高い剛性を発揮し、総合的に最も有効な形状である。四角リブは曲げには強いが捩じりにはやや弱く、六角リブはこの条件下では他に比べ劣る性能を示した。設計者は製品の使用環境と求められる荷重条件を正しく把握し、適切なリブ形状を選択することで、軽量かつ高強度な設計を実現できる。CAE解析を通じて定量的に評価することは、従来ノウハウに頼っていたリブ設計に科学的根拠を与えるものであり、今後の設計現場において一層重要性を増していくだろう。