用語解説:CAEにおける応力集中係数とは?具体例もご紹介
- SANKO GOSEI
- 8月18日
- 読了時間: 2分
応力集中係数(Stress Concentration Factor, Kt)とは、材料や構造物に外力がかかったときに、形状的な不連続(穴、切欠き、段差、急な曲がりなど)がある部分に応力が局所的に高く集中してしまう度合いを表す係数です。
定義
応力集中係数 Kt

イメージ

例えば、平板の中央に小さな丸穴がある場合を考えると、穴の縁の部分で応力が集中し、そこに最大応力が発生します。このときの最大応力は、穴がない場合の平均応力よりも大きくなります。その比率が「応力集中係数」です
特徴
形状依存:穴の直径や切欠きの曲率半径が小さいほど、Ktは大きくなる傾向があります。
荷重モード依存:引張、曲げ、ねじりなど荷重の種類によっても値が変わります。
材料には依存しない:理論的なKtは幾何学的な要因のみで決まり、材料強度や弾性率には直接依存しません。
工学的意味
応力集中部は破壊や疲労亀裂の起点になりやすいため、設計では応力集中を避ける形状(フィレットを付ける、穴を大きめにする、急な段差を緩やかにするなど)が推奨されます。
実際の破壊強度に及ぼす影響は、材料の塑性変形能力や疲労強度と関係するため、「有効応力集中係数(疲労応力集中係数 Kf)」という概念も用いられます。
それでは代表的な応力集中係数 Ktの具体例をいくつかご紹介します
1. 丸穴を持つ平板の引張り
幅 Wの平板中央に直径 d の穴がある場合、引張荷重を受けると穴周辺に応力集中が生じます


つまり、穴の比率が大きいほど応力集中は強くなります。
2. 平板の角付き切欠き
平板に「矩形切欠き」が入っている場合、角が鋭いほど応力が集中します。
切欠き底の曲率半径 ρが 大きい → 応力集中は小さい
ρが 非常に小さい(鋭角) → Ktは急激に大きくなる

3. 丸棒の段付き(軸の直径が急に変わる場合)
機械要素でよくある「段付き軸」では、段差部に応力集中が起こります。
段差のフィレット半径 rが小さいと Ktは大きくなる
比例関係で、D/dが大きいほど応力集中も増加
例(引張・曲げの場合):


4. 軸の横穴(ピン穴など)
丸棒の中央に横穴を開けて引張荷重をかける場合:


ポイントまとめ
穴、切欠き、段差、鋭い角 → 応力集中を引き起こす
曲率半径を大きくする、段差を緩やかにする、穴を補強する → 応力集中を緩和できる
目安として、設計現場でよく出る Ktは 2〜3程度 が多い