成形収縮率は、成形条件によって変化することは、成形現場に携わる人からすれば半ば常識的な内容である。しかし、具体的にどの因子が成形収縮率を変化させるのかというのは、感覚的にはわかるがそれを実験的に示すのは意外に難しい。
これは、成形条件には、樹脂温度、金型温度、充填時間、保圧圧力、冷却時間など多くのパラメータが存在するが、たとえば、充填時間を変化させたとき、溶融樹脂温度は、金型に流入する際のせん断発熱によって変化することが考えられる。このように、射出成形条件は、設定条件そのものを独立に変化させることが難しくあるパラメータの変化が他のその変化に影響を与える事を考慮した実験が必要である。このような場合に統計的手法を用いることで、各要因に対する現象の依存性を評価することが可能である。ここでは、直交実験の手法を用いることで、各成形条件の因子の影響を統計的に推定することで成形収縮と成形条件の依存性を評価した。
<実験と結果>
成形品は、図2.1に示す、長さ200[mm]、幅40[mm] 、厚さ2[mm]の平板で、流動方向が長さ方向と同じになるように曲面加工されたファンゲートから樹脂を充填するように加工された金型を用いることによって得られた。
図 2.1. 金型とマーカーライン
成形条件は、L16直交表により各条件を割り付け、直交実験を行った。各条件と配置した列の組み合わせを表2-1に示す。
図2.2に成形収縮率に対する成形条件の依存性を示す。成形収縮率は保持圧力の値に大きく依存する事がわかる。また、成形品の場所や流動方向やそれに直交する方向に対して成形収縮率の値は変化することがわかる。また、成形収縮率には流動方向に対する異方性が存在することもわかる。
〇成形収縮率
表2-1. 直交実験のための成形条件(L16)
図2.2. 収縮率の因子分析;□:流れ方向(領域1);○:流れ方向(領域2)
■:横方向(領域1);●:横方向(領域2) A~E 因子の説明は表 2-1 を参照
▶成形収縮率の保持圧力依存性➡こちら
▶成形収縮異方性の分布と成形品変形の関係モデル➡こちら
▶樹脂製品の成形収縮率➡こちら
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