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成形不良:射出成形品の環境事故 ストレスクラッキングテスト

射出成形品の環境事故ここでは主に「環境亀裂」の解説を行う。

使用中のプラスチック部品に突然亀裂が入ることがある。使用応力が許容応力をはるかに下回っており、なぜ亀裂が入ったのか見当がつかず困ることがある。

ストレスクラッキングのイラスト

この現象は非結晶性のプラスチックに多く、衝撃値の非常に強いポリカーボネートにも発生する。

また、結晶性プラスチックは耐薬品性があるので、種々の化学薬品との接触が多いが、特殊なものとの接触で予想しなかった亀裂が入ることがある。いずれも比例限度内で破壊する脆性破壊であり、前者は外部荷重による外部応力に成形時の内部応力が加えられた応力破壊である。成形時応力(成形歪)が大きいのが原因である。後者の化学薬品との接触による亀裂はストレスクラッキングあるいは環境亀裂(Stress cracking、またはEnvironmental cracking)といわれるもので、これも内部応力が加担している。

 ストレスクラッキングは広義には外力プラス高温環境、外力プラス溶剤接触、外力プラスガス雰囲気などによる割れ、と細かいひび割れのすべてを含めていうことがある。

このトラブル防止方法で最も効果のあるのは部品が使用される環境をよく調査し、その環境に強い材料を使うことはもちろんであるが、これに十分期待できない場合は成形品の内部応力(成形歪)をできるだけ減らす努力をすべきである。

いずれにしても成形による歪が大きいと単純な負荷にも、環境にも弱くなるので、別項説明の成形に原因がある「強度不足」の対策を実施することもこの事故対策となる。

また、目的は全く違うが、材料の耐環境試験方法として、このような環境亀裂を逆に利用したストレスクラッキングテストがある。


表1 .各樹脂のストレスクラッキングテスト用薬品

樹脂

薬品名

アクリル樹脂

イソプロピルアルコール

ポリスチレン

ノルマルへプタン

ABS樹脂

氷酢酸

ポリカーボネート

四塩化炭素

ポリアセタール

塩酸

ポリアミド

蟻酸

表1はストレスクラッキングテストに使用する溶剤である。

この溶剤はあくまで内部応力にレベルを調べるためのもので、実用的にこれらの溶剤に耐えられるものではなく、数秒または数分でクラックが生ずる。テスト方法の一例を図1に示す。


[ストレスクラッキングテスト]

耐環境応力性を調べるために各種液の環境化で、応力を加えた場合、亀裂の発生状態を測定する試験であり、定ひずみ試験は試験片に一定の深さ、長さのノッチを入れ治具で曲げたあと、試験片固定具に取り付け、試験液の入ったガラス試験片に入れ、水温50℃の水槽中で、亀裂の発生時間を測定する。定応力試験は試験液の入ったガラス管を50℃に加熱し、その中に試験片を入れ、その後引張応力(80,90,100kgf/cm2)を加え、試験片の破断時間を測定して環境応力亀裂性を評価する。(JISK6760,Z1703)

この試験法はポリエチレンのテストに用いられる。

定応力環境亀裂試験装置の例

プラスチックの可塑性を改善し、成形品に柔軟性を加えるために加えられる物質を可塑剤というが、可塑剤の中にはプラスチックの外側ににじみでるものがあり、このために成形品の特性が低下し、にじみでた可塑剤の影響で成形品の表面が白濁したり、光沢を失ったりして外観をひどく悪くする。それだけではなく、組付けられた相手の部品ににじみ出た可塑剤が移行し、相手部品にクラックを生じさせたり、変色、凹み、ひび割れのトラブルを生む。

この移行現象をマイグレーション(Migration)という。

この移行はどのプラスチックにもあるというものではなく、軟質塩化ビニルの可塑剤が主役である。軟質塩化ビニルの可塑剤は種々のものがあるが最も多いのはDOP(フタル酸ジオクチル)であり、相手がスチレン系であると容易に移行する。プラスチックが今日のように普及している市場ではこのトラブルはほとんど見かけなくなったが、以前に家電製品のABS樹脂のケースに接する軟質塩ビホースのDOPが移行し、ABS樹脂が脆性破壊(ねばり気のない、もろい割れ方)して大きな騒ぎとなったことがあった。

対策は移行しにくい可塑剤を使用するか、相手の材質を変更し移行を受けない結晶性プラスチックとすることである。


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