樹脂は、化学的に合成されたまたは天然の高分子化合物であり、さまざまな種類が存在します。以下に、一般的な樹脂の種類とそれぞれの特徴を紹介します。
①ポリエチレン (Polyethylene):
・特徴:
①収縮が大きく変形しやすい
②冷却時間を要し成形性はあまりよくない
③成形収縮率の金型温度依存性が大で安定性も悪い
④アンダーカットの無理抜きに注意必要
・成形及び金型のポイント:
①材料充填速度の速くなる金型設計(ゲートなど)を行う
②冷却速度を均一にするような冷却方法を考える
③歪み変形防止を考慮する
・収縮率(×1/1000) :高密度(20~50) 中・低密度(15~50)
②ポリプロピレン (Polypropylene): ・特徴:
①成形性はかなりよい
②成形・歪み・ヒケが生じやすい
③ヒンジ特性がある
・成形及び金型のポイント:
①ヒンジのある成形品のゲートデザインは要注意
②ヒケ、変形の防止対策が必要
・収縮率(×1/1000) :10~25
③ポリ塩化ビニール (PVC - Polyvinyl Chloride): ・特徴:
①熱安定性が悪く成形温度幅がせまい
②流れがよくない
③外観が悪くなりやすい
④金型を腐食させる
・成形及び金型のポイント:
①流動抵抗の少ないランナー、ゲートにする
②腐食防止のために金型の表面処理(メッキ)が必要
・収縮率(×1/1000) :硬質1~5 軟質10~50
④ポリスチレン (Polystyrene): ・特徴:
①流れが良く成形性が良好で成形能率もよい
②クラックが入りやすい
③バリが出にくい
・成形及び金型のポイント:
①突出し時のクラックに注意して適切なノックアウト機構を選定する
②成形品にクラックが入らないように抜き勾配を1°以上とる。
③金型のアンダーカットをさける
・収縮率(×1/1000) :2~6
⑤ポリカーボネート (Polycarbonate):
・特徴:
①溶融温度が高く、高圧、高温での成形を必要とする
②残留応力によるクラックが発生しやすい
③硬いため金型を破損しやすい
④バリが出にくい
・成形及び金型のポイント:
①材料の予備乾燥を十分に行う
②流動抵抗の少ないランナー・ゲートデザインが必要
③金属インサートの挿入はできるだけ避ける
④抜き勾配2°以上をとる
・収縮率(×1/1000) :5~7
⑥ポリアミド (Polyamide): ・特徴:
①溶融粘度が低く流れ特性が良好
②バリが出やすい
③収縮率の安定性が悪い
・成形及び金型のポイント:
①バリ防止のための精密金型が必要
②工業部品は金型温度を上げ、結晶化に対する注意が必要
③ヒケ防止と寸法安定性の向上
・収縮率(×1/1000) :ナイロン6:6~14 ナイロン66:8~15
⑦ABS樹脂 (ABS Resin): ・特徴:
①流れはよくない
②成形品の特性は安定している
③ゲート部表面の外観及びウエルドが目立ちやすい
・成形及び金型のポイント:
①流れに対してランナー・ゲートの適切なものを選定する
②ウエルドに対するゲート位置を適切に設ける
③高圧成形のため抜き勾配は2°以上とること
・収縮率(×1/1000) :3~8
⑧アクリル樹脂 (Acrylic Resin): ・特徴:
①流れが悪く、充填不良、フローマーク、圧力不足によるヒケが発生しやすく高圧成形を
要する
②光学的用途が多く透明度が問題となる
・成形及び金型のポイント:
①抜き勾配はできるだけ大きくとること
②流れに対するランナー・ゲートのデザインが重要である
③材料温度、金型温度の管理に注意を要する
・収縮率(×1/1000) :2~25
⑨ポリアセタール樹脂 (POM): ・特徴:
①流れが悪く分解しやすい
②ゲート部にフローマーク発生
③ヒケ、変形が生じやすい
・成形及び金型のポイント:
①流れ及びゲート部の外観をよくするようなランナー・ゲートが必要
②成形条件(特にシリンダー及び金型温度)の管理が必要
・収縮率(×1/1000) :20~25
これらの樹脂は、それぞれ異なる特性を持ち、異なる用途に適しています。選択する際には、物質の特性、耐久性、熱特性、化学的特性など、具体的な要件に合わせて選定することが重要です。また、環境への影響や廃棄物処理にも注意が必要です。
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