改善事例:Yリブのショート不具合と対策
- SANKO GOSEI
- 1 日前
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はじめに
ケースハウジング製品の品質改善を目的とした取り組みとして、「Yリブショート不良」に焦点を当てた改善活動を実施しました。本事例では、不良の発生メカニズムを明らかにし、効果的な対策を講じることで不良ゼロを達成し、同時に検査負荷と金型メンテナンス工数を大幅に削減した取り組みを紹介します。
背景と課題

ケースハウジングは、1軸・2軸の各種入子を組み合わせて製造される複雑な成形部品であり、製品バリエーションは全36種に及びます。中でも、部品が本体から外れるのを防ぐ重要な役割を果たす「Yリブ」で、ショートショット不良が慢性的に発生していました。

この不良は組立検査工程で判明し、流出した場合は機能障害に直結するため、成形後と組立後の2工程で全数検査が行われていました。その結果、検査負荷が高く、かつ流出リスクを完全には抑えられていない状況でした。
不良の実態把握
2015年1月〜3月の選別結果から、不良全体のうち「Yリブショート」が88%を占めており、発生件数は7,680個にのぼりました(不良総数8,700個中)。以下に代表的な不良項目を示します:
不良項目 | 発生件数 | 発生比率 |
Yリブショート | 7,680個 | 88% |
ボイド(溶着リブ付近) | 600個 | 7% |
ユジワ | 420個 | 5% |
このことから、Yリブのショート不良が最優先で取り組むべき課題であると判断しました。
原因分析
成形品を分解・観察したところ、Yリブ先端が樹脂ショート状態になっており、製品から外れやすくなっていました。原因を突き詰めた結果、以下の事実が明らかとなりました

金型内部にガスが溜まりやすい構造Yリブは袋小路形状であり、しかも金型がムク構造(=ガス抜きしにくい)であるため、樹脂充填時にガスが逃げきれず、リブ先端でショート不良を引き起こしていました。
清掃困難な形状ミゾが狭く、金型の汚れが溜まりやすく、清掃しても残留しやすい構造でした。1日10回の清掃が必要で、1日あたり100分の工数を要していました。
対策の検討と実施
■ 初期対策:型清掃による対応
入子交換のたびに清掃を行うことで不良流出を抑制しましたが、根本的な解決には至らず、時間的ロスも大きいため、恒久対策が必要とされました。
■ 恒久対策の検討
以下の対策案を比較検討しました。
対策案 | 効果予測 | コスト | 加工難易度 | 期待効果 |
Yリブ肉厚を増やす | 流動性向上 | ○ | ○ | △ |
ガスベントの追加 | ガス逃げ確保 | △ | △ | ○ |
ガス逃げピンの設置 | 先端からのガス排出 | ○ | ○ | ◎ |

最終的に、「ガス逃げピンの設置」を選定し、リブ中央部にφ1.2のピンを設け、先端を削ってガス排出性を向上させました。
結果と効果
ショート不良:ゼロ達成改造後373,760個を生産して、Yリブショート不良は0個を記録。後工程での不良流出もゼロとなりました。
清掃工数の大幅削減:型清掃回数を月220回から1回に大幅削減。作業負荷と金型へのダメージが低減されました。
金型の状態改善:改善後2ヶ月経過時でも金型内部に汚れがほとんどなく、メンテナンス性が向上しました。
今後の展開と教訓
Yリブのように「最終充填位置」「袋小路形状」を持つ部分は、初期設計段階でガス逃げ経路を考慮する必要があります。
透明樹脂による試作は、ボイドや強度不良の根本原因を視覚的に特定するのに有効です。
本事例のような不具合は、T/E(設計)と現場が密に連携し、金型構造の観点からも改善を考える体制が重要です。
まとめ
Yリブショート不良のように、工程内で繰り返し発生しやすい不具合は、対症療法的な処置に頼るのではなく、金型・流動・ガス抜け構造に根ざした恒久対策が求められます。本事例のような取り組みを通じて、成形現場の「不良ゼロ」に向けた知見を蓄積し、全社展開へとつなげていくことが重要です。
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