マグネシウムのチクソモールディング
- SANKO GOSEI
- 4 時間前
- 読了時間: 4分
はじめに
マグネシウムは資源として8番目に豊富な元素で広く世界に普及している。
比重がアルミニウムより軽い(アルミの約3分の2)性質が自動車部品用の素材として注目されている。しかし、以前はその耐食性に問題があり、実用は限定的だった。
その後、耐食性の高い合金組成され、自動車及び携帯用の電気機器で再び注目されるようになってきた。
成形方法は従来からある「ダイカスト法」に加え、数年前から「チクソモールディング法」(以下「チクソ法」と略称)が登場している。チクソ法はプラスチックのインラインスクリュー射出成形と類似の原理でマグネシウム粒を溶融し、高速高圧で金型内に射出する方法である。従って素材の違いがあるものの、ダイカスト法と異なりプラスチック加工メーカーにとって導入時の抵抗の少ないプロセスといえる。
マグネシウム合金の特徴
①非常に軽い金属である
②強度が優れている
③加工性がよい
④耐くぼみ性が優れている
⑤耐クリープ性がよい
⑥寸法変化が少ない
⑦低温特性がよい
⑧振動吸収性がよい
項目 | マグネシウム合金 | アルミニウム合金 | ABS | PC/ABS | |
Az 91 | AM 60 | ||||
比重 | 1.82 | 1.79 | 2.7 | 1.05 | 1.17 |
凝固点(℃) | 596 | 615 | 595 | 90(Tg) | 100(Tg) |
熱伝導率(W/MK) | 72 | 62 | 100 | 0.2 | 0.2 |
引張強さ (MPa) | 230 | 220 | 315 | 35 | 46 |
弾性率 (GPa) | 45 | 45 | 71 | 2.1 | 2.6 |
※AZ91の合金組成:Mg90,A19,Zn(亜鉛) 1(%)
凝固点の欄:*分解温度、**PET樹脂(Tg)
表1 マグネシウムと他素材との物性比較
マグネシウムの成形方法
(1)チクソ成形法
①チクソ法のはじまり
1971年マサチュセッツ工科大学のスペンサーが、半溶融状態のマグネシウムにせん断力を加えると「チクソトロピー現象」を呈することを発見した。これを発展させて1987年、米国のダウケミカルが基本特許を確立した。
日本製鋼所が日本及び極東地域での装置製造の独占実施権を取得している。
ダイカスト法の製品と比べ、「ヒケ、割れ、す、そり」の少ない薄肉の成形品を作りやすいと言われている。
②「チクソ」の由来
物質の変形と流動に関する科学「レオロジー」で使われる用語「チクソトロピー」から取っている。チクソは「触れる」、トロピーは「変化」を意味する。「揺変現象」とも言われている。大地震の時、埋立地に造成された砂地地盤が急激に流動化し、建物が傾く等の被害があるが、これが典型的な揺変現象である。溶融時のプラスチック材料も同様にチクソトロピー現象を呈する。マグネシウムも半溶融時にこの現象が現れることを利用して、樹脂と同様の射出成形法が適用できるようになった。
(2)ダイカスト法
ホットチャンバー法とコールドチャンバー法がある。ピストンで押出す所は似ているが、射出圧力はチクソ法の3分の1位と低い。従って1mm以下の肉厚の製品を狙うにはチクソより若干不利と言われている。
マグネシウム合金のチクソ成形品コスト構成
工程 | 構成比 (%) | 備考 |
原料 | 10 | 原料:インゴットの切削チップ |
成形 | 10 | トリミング、簡易仕上げ |
機械加工 | 30 | バリ仕上げ、ネジ穴加工 |
表面処理、塗装 | 50 | 防錆、パテ埋め、研ぎ出し、塗装 |
表2 マグネシウム成形品のコスト構成
マグネシウム成形品の特長
(1)特長
高剛性、高強度(薄肉可)、軽量、良好な熱伝導率、EMIシールド性、難燃性、易リサイクル性、ハイサイクル成形
(2)短所
設備導入コストが高い、バリ不可避
外装用途では防食対策必要ーメッキ、化成処理、塗装
安全対策ー仕上げ時発生の粉塵対策(防爆対策)必要
期待される用途
分類 | 用途 |
家電 | デジタルVTR、携帯電話、TV |
OA | ノートパソコン |
精密 | デジタルカメラ |
自動車 | ハンドルフレーム、クロスカービーム |
表3 期待されるマグネシウム製品
ダイカスト(従来法)と射出成形法の比較


●ハイブリッド工法:金属ダイカスト+プラスチック射出成形
●成形方法:チップ状Mg合金原料➡シリンダー内で半溶融化(チクソトロピー状態)
➡射出、凝固➡ネットシェイプパーツ
チクソモールディング法と呼ばれる
●メリット(Vs,ダイカスト)
プロセス:安全、簡単、清潔、高生産性、金型寿命の向上
製品:寸法精度の向上、ガス欠陥の低減、ひけ割れの減少


