top of page

PA6ナイロン:変色の発生原因とその回避方法

SANKO GOSEI

更新日:3月11日

PA6(ポリアミド6)ナイロンは、機械的強度や耐摩耗性に優れ、多くの産業で使用されています。しかし、成形前の材料乾燥が適切でないと、成形品が黄色く変色したり、物性が低下したりする問題が発生します。特に、過乾燥や高温による熱劣化 は、成形不良の大きな要因となります。本記事では、PA6の材料乾燥における注意点と、熱劣化を回避する方法について詳しく解説します。


PA6ナイロンの特性と乾燥の重要性

PA6ナイロンの吸湿性

PA6は非常に吸湿しやすい材料であり、空気中の水分を吸収すると、成形時に加水分解が起こりやすくなります。これにより、強度低下・寸法変化・外観不良 などの問題が発生します。そのため、成形前に適切な乾燥 を行うことが不可欠です。

乾燥が必要な理由

乾燥不足によるトラブルには以下のようなものがあります:

  • ガスの発生 → シルバーストリーク(銀条)やボイド

  • 加水分解 → 機械的強度の低下

  • 表面の曇りやつや消し効果

しかし、逆に乾燥しすぎると熱劣化が進み、変色や物性低下 が起こるため、適切な管理が求められます。


熱劣化による変色の主な原因

材料乾燥温度による違い

(1) 乾燥温度が高すぎる

PA6は80℃前後で3〜5時間の乾燥 が一般的な目安です。しかし、100℃以上で長時間乾燥すると、酸化が進み黄色く変色 しやすくなります。

🔹 対策:

  • メーカー推奨の80℃・3〜5時間を厳守

  • 乾燥機の温度設定を定期的に点検

(2) 成形時のシリンダー温度が高すぎる

ナイロンは230〜270℃ の範囲で成形することが多いですが、温度が高すぎると分解 し、変色やガスの発生を招きます。

🔹 対策:

  • 後部ゾーンの温度を適正値(230~250℃)に調整

  • 滞留時間を短縮し、劣化を防ぐ

(3) シリンダー内での滞留時間が長い

ショットサイズが小さすぎると、樹脂が長時間シリンダー内に滞留し、熱劣化が進みます。🔹 対策:

  • ショットサイズをシリンダー容量の20~80%の範囲 に設定

  • 成形サイクルを短縮し、不要な加熱時間を減らす

(4) 材料の酸化

乾燥や成形中に酸素と接触すると、酸化が進み変色します。特に高温での乾燥や長時間放置 すると、劣化が顕著になります。

🔹 対策:

  • 乾燥機のフィルターを定期的に清掃し、酸化を抑える

  • 窒素置換乾燥を導入する(特に高温乾燥時)

(5) リグラインド材の使用

リグラインド材(再生材)は、すでに熱履歴を受けているため、変色しやすくなります。🔹 対策:

  • リグラインド材の使用率を20%以下に抑える

  • 劣化の進んだリグラインド材を除外する


熱劣化を防ぐためのポイント

  1. 乾燥温度と時間を厳守する(80℃・3~5時間が目安)

  2. シリンダー温度を適正範囲内(230~270℃)に設定する

  3. ショットサイズを適切に調整し、滞留時間を短縮する

  4. エアベント(ガス抜き)を確保し、酸化を防ぐ

  5. リグラインド材の使用比率を抑える

特に、乾燥プロセスと成形条件の適正化が、PA6の劣化を防ぐカギとなります。


まとめ

PA6ナイロンは、適切な乾燥を行わないと、熱劣化による変色や物性低下が発生しやすい素材です。特に、乾燥温度が高すぎる・シリンダー温度が過剰・滞留時間が長い といった要因が、黄色変色の主な原因となります。

対策として、適切な乾燥条件(80℃・3~5時間)を守ること成形条件を適正化すること が重要です。また、材料の管理(リグラインド材の使用制限、窒素置換乾燥の導入など)も検討すると、より品質の安定化につながります。

もしPA6の変色や劣化でお困りの際は、今回紹介したポイントをチェックし、適切な対策を講じてください!

Comments

Rated 0 out of 5 stars.
No ratings yet

Add a rating

プラスチックに関するお悩みは
解決しましたか?

トップページから目的の
コンテンツを探すことができます

23989485.png

★月間アクセスランキング★

bottom of page