PA6(ポリアミド6)ナイロンは、機械的強度や耐摩耗性に優れ、多くの産業で使用されています。しかし、成形前の材料乾燥が適切でないと、成形品が黄色く変色したり、物性が低下したりする問題が発生します。特に、過乾燥や高温による熱劣化 は、成形不良の大きな要因となります。本記事では、PA6の材料乾燥における注意点と、熱劣化を回避する方法について詳しく解説します。
PA6ナイロンの特性と乾燥の重要性
PA6ナイロンの吸湿性
PA6は非常に吸湿しやすい材料であり、空気中の水分を吸収すると、成形時に加水分解が起こりやすくなります。これにより、強度低下・寸法変化・外観不良 などの問題が発生します。そのため、成形前に適切な乾燥 を行うことが不可欠です。
乾燥が必要な理由
乾燥不足によるトラブルには以下のようなものがあります:
ガスの発生 → シルバーストリーク(銀条)やボイド
加水分解 → 機械的強度の低下
表面の曇りやつや消し効果
しかし、逆に乾燥しすぎると熱劣化が進み、変色や物性低下 が起こるため、適切な管理が求められます。
熱劣化による変色の主な原因

(1) 乾燥温度が高すぎる
PA6は80℃前後で3〜5時間の乾燥 が一般的な目安です。しかし、100℃以上で長時間乾燥すると、酸化が進み黄色く変色 しやすくなります。
🔹 対策:
メーカー推奨の80℃・3〜5時間を厳守
乾燥機の温度設定を定期的に点検
(2) 成形時のシリンダー温度が高すぎる
ナイロンは230〜270℃ の範囲で成形することが多いですが、温度が高すぎると分解 し、変色やガスの発生を招きます。
🔹 対策:
後部ゾーンの温度を適正値(230~250℃)に調整
滞留時間を短縮し、劣化を防ぐ
(3) シリンダー内での滞留時間が長い
ショットサイズが小さすぎると、樹脂が長時間シリンダー内に滞留し、熱劣化が進みます。🔹 対策:
ショットサイズをシリンダー容量の20~80%の範囲 に設定
成形サイクルを短縮し、不要な加熱時間を減らす
(4) 材料の酸化
乾燥や成形中に酸素と接触すると、酸化が進み変色します。特に高温での乾燥や長時間放置 すると、劣化が顕著になります。
🔹 対策:
乾燥機のフィルターを定期的に清掃し、酸化を抑える
窒素置換乾燥を導入する(特に高温乾燥時)
(5) リグラインド材の使用
リグラインド材(再生材)は、すでに熱履歴を受けているため、変色しやすくなります。🔹 対策:
リグラインド材の使用率を20%以下に抑える
劣化の進んだリグラインド材を除外する
熱劣化を防ぐためのポイント
乾燥温度と時間を厳守する(80℃・3~5時間が目安)
シリンダー温度を適正範囲内(230~270℃)に設定する
ショットサイズを適切に調整し、滞留時間を短縮する
エアベント(ガス抜き)を確保し、酸化を防ぐ
リグラインド材の使用比率を抑える
特に、乾燥プロセスと成形条件の適正化が、PA6の劣化を防ぐカギとなります。
まとめ
PA6ナイロンは、適切な乾燥を行わないと、熱劣化による変色や物性低下が発生しやすい素材です。特に、乾燥温度が高すぎる・シリンダー温度が過剰・滞留時間が長い といった要因が、黄色変色の主な原因となります。
対策として、適切な乾燥条件(80℃・3~5時間)を守ること、成形条件を適正化すること が重要です。また、材料の管理(リグラインド材の使用制限、窒素置換乾燥の導入など)も検討すると、より品質の安定化につながります。
もしPA6の変色や劣化でお困りの際は、今回紹介したポイントをチェックし、適切な対策を講じてください!
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