樹脂射出成形の世界は日々進化しており、製品設計者や成形技術者にとって常に新たな可能性が広がっています。その中でも特に注目を集めている技術の一つが「多色成形」や「2色成形」と呼ばれるプロセスです。この記事では、多色成形の基本、プロセス、メリット、設計や製造時の注意点について詳しく解説していきます。
多色成形(2色成形)とは?
多色成形(2色成形)は、1つの製品に異なる種類や色の樹脂を組み合わせて成形する技術です。具体的には、1回の成形工程で2種類以上の樹脂を射出し、異なる色や材料特性を持つ部分を1つの製品に仕上げます。

▸プロセスの概要
多色成形は通常、次の手順で行われます:
第1樹脂の射出成形 最初に1色目(または1種類目)の樹脂を金型に射出して成形します。
金型の回転または移動 成形された第1樹脂部分を金型内で回転させたり、移動させたりします。
第2樹脂の射出成形 次に2色目(または2種類目)の樹脂を射出し、先に成形された第1樹脂部分と融合させます。
冷却・取り出し 成形品が冷却され、取り出されます。完成品は一体化した状態になっています。

▸多色成形のメリット
多色成形には、従来の単色成形では得られない多くのメリットがあります。
1. 製品デザインの自由度向上
多色成形を活用することで、異なる色の樹脂を使い分けたカラフルな製品を一体化した状態で製造できます。これにより、後工程での塗装や組み立てが不要となり、美観性を高めると同時にコスト削減が可能です。
2. 機能性の向上
異なる特性を持つ樹脂を組み合わせることで、機能性の高い製品を製造できます。例えば、硬い樹脂と柔らかい樹脂を組み合わせて、グリップ部分に滑り止め機能を追加することができます。
3. 組立工程の省略
従来は複数の部品を組み立てることで実現していた構造を、一体成形で製造できるため、製造コストの削減や品質の向上につながります。
▸多色成形に適した樹脂
多色成形では、使用する樹脂同士の相性が非常に重要です。一般的に、以下のポイントを考慮して材料を選定します。
接着性
異なる樹脂がしっかりと融合することが求められます。同じポリマー系統(例:ポリプロピレンとエラストマー)であれば接着性が高い傾向があります。
熱特性の一致
樹脂の溶融温度や熱膨張率が大きく異なると、成形後の剥離や歪みが発生する可能性があります。
収縮率の考慮
収縮率の差が大きいと、成形品に内部応力が発生し、製品品質に悪影響を及ぼします。
例:よく使用される材料の組み合わせ
ポリカーボネート(PC)+アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)
ポリプロピレン(PP)+熱可塑性エラストマー(TPE)
▸多色成形の課題と対策
多色成形には多くのメリットがありますが、同時にいくつかの課題も存在します。ここでは主な課題とその対策を紹介します。
1. 金型設計の複雑さ
金型は複雑で高精度が求められます。特に、第1樹脂と第2樹脂が重なる部分の設計は慎重に行う必要があります。
対策: 専門の設計ツールを使用し、シミュレーションを行うことで、金型の設計ミスを防ぎます。
2. 成形条件の最適化
各樹脂の射出温度や圧力を最適化しないと、不良品の発生率が高まります。
対策: 材料メーカーの推奨条件を参考にしつつ、射出速度や保圧の調整を行います。
3. 樹脂間の剥離
樹脂の選定が適切でない場合、製品の使用中に剥離が発生することがあります。
対策: 接着性の高い材料を選び、必要に応じてプライマー処理や表面加工を施します。
多色成形の実際の活用例
多色成形はさまざまな分野で活用されています。以下にその具体例をいくつか紹介します。
家電製品 ボタン部分が柔らかい素材で作られたリモコンや、異なる色を組み合わせた家電外装。
自動車部品 操作性を向上させるために、硬質素材とエラストマーを組み合わせたダッシュボードやハンドル部品。
日用品 滑り止めグリップを備えた歯ブラシやキッチンツール。
医療機器 触感や機能性を重視した、握りやすい医療用ハンドルや安全性の高い部品。
まとめ
多色成形(2色成形)は、製品のデザイン性や機能性を向上させる強力な技術です。適切な材料選定、精密な金型設計、最適な成形条件を整えることで、さまざまな業界で多大な効果を発揮しています。一方で、高度な技術が要求されるため、事前の計画と検証が不可欠です。
これからの成形業界では、多色成形を活用した革新的な製品がさらに増えていくことでしょう。ぜひ、皆さんの現場やプロジェクトでも、この魅力的な技術を取り入れてみてください。
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