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用語解説:樹脂材料におけるガラス転移温度とは?

プラスチック材料の設計・加工・使用において、非常に重要な指標のひとつが「ガラス転移温度(Tg)」です。この用語は、特にアモルファス樹脂(非結晶性プラスチック)を扱う際に頻出するキーワードであり、その意味と役割を正しく理解することは、材料選定や成形条件の最適化に直結します。本記事では、ガラス転移温度とは何か、どのような現象なのか、なぜ重要なのかを分かりやすく解説します。


ガラス転移温度(Tg)とは?

ガラス転移温度とは、アモルファス樹脂がガラスのような硬くて脆い状態(ガラス状態)から、柔らかくて変形しやすい状態(ゴム状態)へと変化する温度のことです。

温度が低いとき、アモルファス樹脂の分子鎖は非常に動きにくく、固くて割れやすい「ガラス状」の物性を示します。しかし温度が上昇してTgに達すると、分子の熱運動が活発になり、内部構造に自由度が生まれ、柔軟性を持った「ゴム状」の性質に変化します。

この変化は「相転移」ではなく、連続的な物性変化であり、体積や弾性率などの物性が急激に変化する境界点がガラス転移温度と定義されます。

結晶性樹脂との違い

プラスチックには大きく分けてアモルファス樹脂結晶性樹脂の2種類があります。

種類

主な材料

Tgの影響

融点(Tm)

アモルファス樹脂

PS, PC, ABS, PMMA

重要

存在しないか曖昧

結晶性樹脂

PE, PP, PA, POM

あまり影響しない

明確に存在する

結晶性樹脂では、Tgを超えても剛性が保たれる傾向にあり、**融点(Tm)**が実用温度の上限を決定します。一方、アモルファス樹脂では、Tgが使用温度の限界を決める重要な指標になります。


Tgの例(主な樹脂)

材料名

Tg(℃)

ポリスチレン(PS)

約 100

ポリカーボネート(PC)

約 150

ABS樹脂

約 105

ポリメタクリル酸メチル(PMMA)

約 105

ポリエチレン(PE)

−125(影響小)

Tgの変化の様子

Tgの挙動は、次のようなグラフで示されることが一般的です。


樹脂材料における温度と体積の関係図

縦軸:体積[g/cm3] 横軸:温度[℃]

Tgに達するまでは、比容積の増加は緩やかです。ところがTgを境に、傾きが急激に大きくなり、材料が柔らかく変形しやすくなります。これは成形品の寸法安定性耐熱変形温度に大きく影響します。


ガラス転移温度の工業的意義

① 成形条件の最適化

Tgを基準に冷却時間を設定することで、変形や内部応力の発生を抑制することができます。

② 使用環境の温度制限

Tgを超える温度で使用されると、部品の剛性が低下し、変形・破損のリスクが高まります。設計段階で「使用温度 < Tg」を意識することが重要です。

③ 接着・塗装などの後処理条件

Tgを上回る温度で処理すると、変形・表面光沢変化・応力緩和などが生じやすくなります。熱履歴の管理が重要になります。

④ 材料選定の指標

同じような外観・強度を持つ樹脂であっても、Tgの違いによって使用用途が大きく異なることがあります。耐熱性が求められる用途では、Tgの高い材料が選ばれます。


Tgは外部因子でも変化する?

Tgは一定ではなく、次のような条件で変化します:

  • 可塑剤の添加 → Tgを下げる(柔軟性向上)

  • 架橋密度の増加 → Tgを上げる(剛性向上)

  • 分子量の変化 → 一般に分子量が高いとTgは上がる傾向

つまり、Tgは材料の分子構造や配合設計によって調整可能です。


まとめ

ガラス転移温度(Tg)は、アモルファス樹脂が柔軟性を持ち始める重要な転換点であり、プラスチック設計・成形・使用において極めて重要な材料特性です。

特にアモルファス樹脂においては、Tgを意識することで成形条件の最適化、信頼性向上、製品寿命の延伸など、製品品質に直結する効果が得られます。材料選定や加工プロセスの検討時には、必ずTgを確認し、目的に応じた材料を選びましょう。

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