成形不良:シルバーストリーク(銀条)の発生原因と対策
- SANKO GOSEI
- 3月26日
- 読了時間: 4分
更新日:5月29日

シルバーストリーク(銀条)は成形品表面に流れ方向に添って銀色に似た白っぽい糸状のすじが出る現象で、外観部品でしばしば問題となる。成形品の色が黒色の場合、もっとも目立つが、OA機器のハウジングによく使用されるアイボリーなどにも発生して成形担当者を悩ましている。外観部品はABS、AS樹脂、耐衝撃ポリスチレンが多く、これらの材料のプラスチックは吸湿したまま乾燥せずに成形すると水分が溶融材料中で気化し、流れに添って気化した気泡が破砕されて微小の粒となって金型表面にこすりつけられる。
したがって銀条の正体は水蒸気または溶融されたプラスチックから発生するガスである。
対策としては、材料をよく乾燥して溶融された材料からのガス発生を極力抑えるためにシリンダ温度を低めとし、加熱した材料からの分解ガスをなるべく抑え、金型内でエアを巻き込まないように射出速度を遅めに成形することである。
しかし、成形品の形状が成形しにくい形状であると、材料溶融温度を上げ、射出速度を上げざるを得なくなるので成形品の設計にも原因があることがある。

図1は、偏肉とシルバーストリークの関係図である。肉厚の薄い部分があると、その部分に材料を充填させるために材料の温度を上げることになる。
射出の速度を上げるとエアやガスの巻き込みの傾向が強くなりシルバーストリークを発生させる。
図1のように偏肉の程度が大きくなるとバリ、ひけ、シルバーストリークのすべてを防止する成形条件の設定が困難となる。

図2は溶融プラスチックがリブを横断する時にエアを巻き込む状態を示す。
リブは溶融プラスチックの流れ方向に配置されている場合はシルバーストリークは発生しづらいので、なるべく流れ方向に配置したいが、図3のようにリブを目的として流れ直角方向の弱さの補強として配置されることもあり、やむをえない場合もあるのでリブはなるべく低くしてエアの巻き込みを防ぐようにした方がいい。

成形技能面でシルバーストリークを解決する手段として効果があるのは「射出のプログラムコントロール」である。図2のように射出の速度を落とすべきところは落とし、他の部分について必要な速度を守る別名「パタンコントロール」というもので、あらかじめ作られたプログラム通りの圧力、速度で射出装置が作動するもので最近の射出成形機のほとんどが標準装備している。この装置を上手に使うことで、かなりの効果が期待できる。
図3は薄肉容器に見られるケースで、金型温度が低く成形品の肉厚が薄いので射出速度を限界まで早めたためにピンポイントゲートを通過する材料の流速が非常に早く、材料が熱分解しており、そのためにシルバーストリークが発生している。

図4は射出成形機のスクリュからのガス抜き状況である。スクリュの役目の一つになっているこの脱気機能はホッパ付近の温度設定が高すぎると全く機能しない。
ホッパからスクリュに供給された材料はホッパ付近(スクリュの位送部)で固相(固体)のままであるべきで、ここで材料が溶融状態になってしまうとガスがホッパ方向に移動不能となり、ガスは溶融プラスチックに巻き込まれシルバーストリークの原因となる。エアがスクリュに巻き込まれるもう一つの現象は、計量が射出成形機の容量限度に近く、スクリュがフルストロークで後退と前進を繰り返すためにホッパ口からエアを巻き込むものである。
また、高速成形のためにスクリュ回転を高速にし過ぎて材料が過熱し、これが原因になることがあるので高速回転のときは注意を要する。
使用する材料にも原因があることがある。著者の経験でシルバーストリークに悩まされ、あらゆる手を打って対策したが、どうしても解決できず、材料メーカーを変えて同じグレードの発生ガスの少ないものを使用して一挙に解決した事例もある。
使用する材料からガスの発生が多すぎるとシルバーストリークの発生防止が困難になるが、材料そのものに原因がある場合はつぎのことが考えられる。
・可塑剤
・安定剤
・着色剤分散剤
・紫外線吸収剤
・帯電防止剤
などの熱分解である。あらゆる防止手段をとってもなおシルバーストリークが解決しない場合は上記添加剤の分解が原因ではないか、検討してみることが大事である。
熱分解対策は出来るだけ低い温度で成形することがポイントであるが、前にも述べたように成形品形状が複雑で成形現場で温度を高めに設定せざるをえない場合もある。
また使用する射出成形機が大きすぎてスクリュシリンダ内に材料が滞留する時間が長すぎて材料を分解してしまうこともある。原因がいろいろな所に潜むので幅広い検討をしないと解決できないことが多い。
溶融材料から発生するガスは成形品外観に影響するばかりでなく、この現象の極端な場合はガスがキャビティに流入する材料の流れを阻害するために充填不足になったり、ウエルドの原因となったりすることがある。なるべくガス発生の少ない材料の選定も重要な対策の一つである。
Comments