top of page

インサート成形品からのリサイクル 〜廃棄から再資源化への挑戦〜

1. はじめに

近年、自動車部品をはじめとする成形品では、製品の機能性向上を目的としてインサート成形が広く用いられています。しかし、金属部品が組み込まれたインサート成形品は、工程内不良や捨てショットによる廃棄物が発生しても、再利用が難しいという大きな課題がありました。特に、金属と樹脂が一体化されていることにより、分離の手間やコストが再資源化を妨げる要因となっていました。

本記事では、三光合成(株)における「インサート成形品のリサイクル」に関する技術的取り組みを紹介し、その効果と今後の可能性について解説します。


2. テーマ選定の背景

本プロジェクトの発端は、インサート成形品の増加と、それに伴う廃棄樹脂の増加です。工程不良をゼロに近づけることが最も望ましいものの、実際の生産現場では完全な排除は難しく、一定量のスクラップが発生します。

そこで、環境負荷軽減とSDGsの観点から、「再生材として利用可能な形で金属インサートを除去し、リサイクルする」ことがテーマとして掲げられました。


3. 対象製品と課題点

開発対象となったのは、月間100万個を生産している自動車部品。

PBT-GF30%(東レ製)にアルミ製インサートが埋め込まれた構造です。このインサートには抜け止めのカエシが付いており、物理的に樹脂から取り外すのが困難でした。

インサート成形品の断面構造

4. インサート除去に向けた試行錯誤

除去方法として、以下のアプローチが検討されました:

 方法1:ドリルによる掘削

ドリルによるインサート除去結果

ボール盤で穴を開ける単純な方法ですが、除去に時間がかかり現実的ではありませんでした。

 方法2:物理的衝撃によるプレス除去

プレス機によるインサート除去結果

ネジを埋めてハンマーで打撃する方法。しかし、部品が破損したり飛散したりするリスクが高く、作業者の安全性にも課題が残りました。

方法3:超音波によるカット・加熱分離

超音波ナイフ刃によるインサート除去結果
超音波穴あき工具によるインサート除去結果

外部機関と連携し、超音波ナイフ・円柱ツール・穴あき工具による加熱切断をテスト。一定の効果は得られたものの、金属片の飛散やワーク固定の難しさ、加工ムラなどの課題が残りました。


5. 解決の鍵:高周波誘導加熱によるインサート除去

最終的に有効な手段として採用されたのが、高周波誘導加熱を用いたインサート除去です。これはIH調理器と同様の原理で、インサート部の金属だけを選択的に加熱し、樹脂との接着を緩めて分離する方法です。

この手法により、インサートを破損なく除去し、樹脂をリサイクル材として再利用可能な状態に保つことができるようになりました。


6. リサイクルによる効果と展開

この技術の導入によって得られる効果は以下の通りです:

  • 月間2,000kgのPBT廃材を再利用することで、年間960万円のコスト削減

  • 同様の技術をPA6(ザイテル)製のインサート品にも展開可能。年間240万円の削減見込

  • 熱可塑性樹脂と金属インサートの組み合わせであれば多くの製品への応用が期待される


7. 今後の課題と展望

本技術の今後の課題としては、

  • 1台の装置で複数の製品に対応するためのフレキシブルな治具開発

  • 高周波加熱時のインサート材質や形状への対応バリエーションの拡張

今後は他製品への応用を進めつつ、工場内での循環型生産体制の確立を目指します。


Comments

Rated 0 out of 5 stars.
No ratings yet

Add a rating

プラスチックに関するお悩みは
解決しましたか?

トップページから目的の
コンテンツを探すことができます

23989485.png

★月間アクセスランキング★

bottom of page