CAEが無かった時代、成形はどうしていたのか
- SANKO GOSEI
- 5月20日
- 読了時間: 4分

現在の射出成形では、CAE(Computer Aided Engineering)を用いた流動解析が当たり前になっています。
ゲート位置を決める時も、
樹脂がどのように流れるか
どこでウェルドが発生するか
どこにガスが溜まるか
反りがどの程度発生するか
を事前にシミュレーションできる時代です。
しかし、今ほどCAEが普及していなかった時代、成形現場はどのように製品を立ち上げていたのでしょうか。
実はそこには、現代では想像できないような“経験と勘の世界”がありました。
「まず成形してみる」が基本だった時代
現在の製品開発では、
3Dモデル作成
CAE解析
問題予測
金型検討
という流れが一般的です。
しかし昔は、解析ソフト自体が高価であり、導入している企業も限られていました。
そのため、
「実際に流してみないと分からない」
というのが当たり前でした。
金型完成後、まず試作成形を行い、
ショートショット
バリ
ヒケ
ウェルド
ガス焼け
などを確認しながら、現場で少しずつ条件を追い込んでいく。
まさに“実物で解析する時代”だったのです。
ベテラン成形技能者の「感覚」
特に興味深いのは、当時のベテラン技能者たちが持っていた独特の感覚です。
例えば、
「今日は樹脂の流れ方が重い」
「この音はガスが噛んでいる」
「保圧が入りすぎている音だ」
など、機械の“音”や“振動”で状態を判断することがありました。

現在では、
樹脂圧力波形
キャビティ圧センサー
モニタリングシステム
などで数値管理される部分を、当時は人間の感覚で見極めていたのです。
もちろん、これは単なる精神論ではありません。
長年同じ機械を触り続けることで、
スクリュー回転音
油圧作動音
型締め音
の微妙な違いから異常を察知していたのです。
ある意味では、人間そのものが“センサー”でした。
ゲート位置も「経験」が頼り

現在ではCAEを用いて、
圧力損失
流動長
フローフロント
エアトラップ
などを解析しながらゲート位置を決定します。
しかし昔は、基本的に経験則が中心でした。
例えば、
「厚肉部から流す」
「最終充填部を逃がす」
「長手方向へ流す」
といった、現場で積み重ねられたノウハウをもとに設計が行われていました。
もちろん、すべてが上手くいくわけではありません。
実際に成形してみると、
「思ったより流れない」
「ここでウェルドが出た」
「予想外の場所でガス焼けした」
ということも珍しくありませんでした。
そのたびに、
ゲート追加
ベント加工
ランナー修正
などを繰り返していたのです。
現在であれば、解析画面上で数分で確認できる内容を、実際の金型加工で対応していたわけです。
「とにかく圧力を上げる」時代

昔の成形現場では、
「ショートしたら圧力を上げる」
という考え方も珍しくありませんでした。
もちろん、これは間違いではありません。
射出圧力を上げれば流動長は伸びるため、充填不足は改善しやすくなります。
しかしその一方で、
バリ
ガス焼け
金型負荷増加
などの問題も発生します。
現在ではCAEを使い、
流路抵抗
ゲートバランス
エア溜まり
を事前に検証できます。
つまり現在は、「なぜ流れないのか」を解析できる時代なのです。
昔は結果を見ながら調整していましたが、今は“原因”を予測できるようになったと言えます。
それでも成形できていた理由
ここで不思議に思うかもしれません。
「そんな時代でも、本当に量産できていたのか?」
答えはYESです。
むしろ、日本の成形技術が世界的に高く評価される礎は、この時代に築かれたとも言えます。
現場には、
樹脂のクセ
金型の呼吸
温度変化
湿度影響
まで感覚的に理解している技能者が存在していました。
例えば、
「今日は雨だから流れが違う」
「この材料は朝イチだと安定しない」
といった判断を自然に行っていたのです。
現在ではIoTやAIによって数値化されつつある内容を、当時は人が経験で補っていました。
CAEは「職人技を見える化した技術」
CAEは非常に便利な技術です。
しかし、CAEがゼロから答えを生み出したわけではありません。
もともと現場には、
なぜウェルドが出るのか
なぜ反るのか
なぜ流れないのか
を経験的に理解していた人たちがいました。
その膨大な経験則を、
数値化
可視化
再現可能化
したものが、現在のCAE技術とも言えます。
つまり、現代の解析技術の土台には、昔の成形現場で培われた知恵と経験が存在しているのです。
最後に
現在の射出成形は、
CAE
センサー
AI
IoT
などにより、非常に高度な時代へ進化しています。
しかしその一方で、昔の現場には、
「機械の音で異常を察知する」
「流れ方を感覚で読む」
という、人間ならではの技能が存在していました。
現代技術が進化した今だからこそ、かつての“職人の感覚”には学ぶべき部分が多いのかもしれません。






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