金型製造現場では、金型の組み立てや調整に多くの時間が費やされています。特に、突出しブロックの合わせ作業はその中でも非常に手間がかかる工程です。本ブログでは、三光合成株式会社の取り組みを通じて、どのようにして「突出しブロックの合わせ時間」を大幅に短縮し、製造効率を高めたかをご紹介します。
背景:金型生産性向上を目指して
製造工程において、金型の生産性を向上させることは常に課題とされています。特に、突出しブロックの組み立て時には「合わせ作業」に多くの時間が割かれており、金型全体の組み立て時間の約37%を占めているという状況でした。
突出しブロックは、製品を成形した後に金型から取り出すために必要なパーツです。このブロックの調整がうまくいかないと、製品がスムーズに金型から取り出せず、トラブルの原因になります。
従来、このブロックの合わせ作業には多くの手間がかかり、1本あたり30分から2時間を費やしていました。また、金型1つに対して数十本ものブロックを合わせる必要があるため、組み立て作業が長時間化していたのです。
取り組みの内容:工具の改善と新しい加工方法
今回の改善プロジェクトでは、まず従来の加工方法を見直しました。
従来の方法では、突出しブロックとそれを収めるポケットの加工に誤差が生じており、これが合わせ作業の時間を増加させていました。加工誤差の原因は、主に以下の3つに分類されます:
工具のたわみ:加工中、工具が微妙にたわんでしまうため、狙った寸法に仕上がらない。
工具の摩耗:工具が使用されるうちに摩耗し、精度が低下する。
測定基準の不明確さ:組み立て現場での測定基準が曖昧であったため、適切な寸法に仕上がらないことがあった。
これらの問題に対処するため、まず工具の形状を見直しました。従来の加工ではボールエンドミルを使用していましたが、これは剛性が低く、たわみに弱いものでした。
そこで、ラジアスエンドミルという、剛性が高いたわみにくい工具を使用することに変更しました。また、刃数も2枚刃から4枚刃に変更し、より精度の高い加工が可能となりました。
喰らい込み量の調整とプログラムの最適化
現状の0.01喰らい込み量の場合
あわせがきつく、寸法も出ていない為、組立からは合せが大変というクレームがきました
次に0.02喰らい込ませて加工しました
0.02喰らい込ませると合せもし易くなりました
寸法も0に近い値となりモデル通りの寸法になりました
更に0.03喰らい込ませて加工すると少し擦るだけ若しくは、ほぼ擦らなくても良くなりました。寸法はモデル寸法より-0.01~-0.02ほどに収まりました
この結果を踏まえて今後は0.03喰らい込ませて加工する事としました
効果と結果:時間削減と省人化の達成
これらの取り組みの結果、突出しブロックの合わせ時間は劇的に短縮されました。1本あたりの合わせ時間は、従来の30分から2時間という時間が、わずか5分から10分にまで短縮されました。また、作業者も4人から1人に減り、省人化も達成されました。
さらに、組み立て工程全体での時間配分においても、突出しブロックの合わせ作業が占める割合は37%から4%にまで減少し、全体の作業時間が大幅に削減されました。これにより、年間で約500万円のコスト削減効果が見込まれています。
今後の展望
今回の改善は、突出しブロックの合わせ作業に焦点を当てたものでしたが、今後は他の工程にもこの改善手法を展開していく予定です。例えば、金型の縦押切部やPL部への応用によって、さらに組み立て工程の効率を高めることができると期待されています。
また、組み立て調整の工数を削減することで、金型生産性を3倍に向上させるという目標も掲げられており、引き続き省人化と効率化に向けた取り組みが進められる予定です。
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