剪断発熱とは、樹脂が流れる際に発生する摩擦熱のことです。射出成形機では、溶融した樹脂がスクリューや金型内部を高圧で流動します。この際、樹脂分子同士や樹脂と金型表面が擦れ合うことで摩擦が生じ、その結果として熱が発生します。この熱を「剪断発熱」と呼びます。
剪断発熱は、以下の要因で影響を受けます
樹脂の流動特性(粘度)
粘度が高いほど剪断力が増加し、発熱も大きくなります。
スクリューの回転速度と射出速度
高速で動かすほど剪断力が強くなり、発熱量が増加します。
金型やランナーの設計
流路が細かったり複雑だったりすると、流動抵抗が増加し、剪断発熱が強まります。
剪断発熱が与える影響
剪断発熱は一長一短の特性を持っています。その影響を正確に理解することが重要です。
メリット(適度な剪断発熱の発生)
複雑な形状や細かい部分まで樹脂が行き渡りやすい。
ショートショット(樹脂が金型全体に充填できない現象)を防ぐ。
スムーズな充填が可能となり、成形品の表面品質が向上。
デメリット(過剰な剪断発熱の発生)
熱分解:樹脂が高温にさらされると、化学構造が壊れ、成形品の強度や耐久性が低下。
ガス発生:分解したガスが成形品内に取り込まれ、気泡や焼けた臭いの原因に。
色調の変化:特に白や透明な材料では黄変が顕著。
剪断発熱を適切に管理するポイント
1. 射出条件の最適化
スクリューの回転速度や射出速度を調整して、過剰な剪断力を抑えましょう。
必要以上に高い射出圧力を避けるのもポイントです。
2. 樹脂の選定
粘度が高い樹脂ほど剪断発熱の影響を受けやすいため、適切な粘度の材料を選ぶことが大切です。
耐熱性が高い樹脂を使用すれば、温度上昇による劣化リスクを軽減できます。
3. 金型設計の工夫
ランナーやゲートを適切な形状・サイズに設計し、樹脂がスムーズに流れるようにします。
ヒートバランスを考慮して金型温度を均一に保つことで、剪断発熱をコントロールできます。
↑ランナーのRを大きくすることで流動中の剪断発熱を抑える工夫
4. メンテナンスの徹底
スクリューや金型が摩耗していると流動抵抗が増し、剪断発熱が過剰になることがあります。定期的なメンテナンスでトラブルを防ぎましょう。
まとめ
剪断発熱は射出成形において避けられない現象ですが、その特性をしっかりと理解し、適切に管理することで成形の安定性や品質を向上させることができます。「熱すぎても、冷たすぎてもダメ!」 という絶妙なバランスを意識して、最適な成形条件を追求しましょう。
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