樹脂材料のカタログ値には引張り・圧縮・せん断などの外力に対してどの程度の耐久性を持つかなどの機械的物性が表示されている。しかし、それらの値はJIS規格で推奨された肉厚(2.0~4.0mm)で成形されたものであり、一般的な樹脂成形品肉厚(1.5mm以下)に比べ、乖離がある。一般的に肉厚が薄い程、機械的物性が低下すると言われているが
今回は成形品肉厚が2.0mm,1.5mm,1.0mmと変化させた場合に引張破断伸びがどの位変化するか実験を行いました。
実験方法
上記の寸法で射出成形平板を成形し、ダンベル形状で打ち抜き、引張試験片を作成する
成形品の肉厚は1.0mm,1.5mm,2.0mmの3種類を準備した
材料は日本ポリプロ:BC03B(PP)を使用した。
打ち抜かれた引張試験片
引張試験を実施
実験結果
引張破断時の伸び量で比較を行いました。
カタログ値をバージンとすると、肉厚が1.5mm,2.0mmの時は24%低下、1.0mmの時は半分以下の64%低下となりました。
肉厚が1.0mmの時に引張破断伸び量が低下した要因として
成形品のスキン、コア層割合の差が考えられます。
こちらは、左に厚肉成形品の断面図、右に薄肉成形品の断面図を示した図になります。
二つを比較すると、薄肉では肉厚に対してスキン層割合が多く、流動するコア層の厚みが薄くなります。これにより流動樹脂は抵抗を受けてせん断を大きくうけるため、絡み合っていた分子はほどけてしまい、物性が低下します。
一方で、厚肉では肉厚に対してスキン層割合が少なく、流動樹脂にせん断をあまり与えないので、分子がほどけずに進み、物性低下を抑えられたと考えられます。
次回は射出速度の違いが引張破断伸びに与える影響をご紹介したいと思います。
Comments