現場で発生した不良の内容
弊社の量産品において成形工程でサイクルタイムが長引くという問題が発生しました。見積もりでは60秒の成形サイクルが期待されていたにもかかわらず、実際には72秒もかかってしまい、12秒の遅延が生じています。これは生産効率に大きな影響を与える要因となります。
成形サイクルを短縮するために、いくつかの試みが行われましたが、その結果、不良率が100%になるケースや、途中で製品が変形してしまうケースがありました。最終的に、冷却時間を45秒に設定することで、安定した品質の製品が得られるようになったものの、サイクルタイムは依然として72秒のままでした。
不良の原因分析
この不良の主な原因は、「リブがスライドに貼り付く」ことにあるとされました。リブとは、製品の強度を高めるための構造部分で、製品がスライドから取り出される際に貼り付いてしまうと、製品が引っ張られて変形してしまいます。
使用されている材料であるTPV(熱可塑性エラストマー)は、ゴムのように金型に貼り付く性質を持っています。したがって、離型性を改善するには、十分な冷却時間を確保し、製品が金型に貼り付かないようにする必要があります。しかし、冷却時間を延ばすとサイクルタイムが長くなり、生産効率が低下するというトレードオフが存在します。
改善策の検討
改善策として、型閉・射出時に成形品リブへのエアブロー回路の導入が検討されました。
エアブローとは、金型から製品を剥がすためにエアーを吹き付ける方法です。これにより、製品がスライドに貼り付くのを防ぎ、離型を容易にすることができます。
エアブロー回路の導入と最適化:
最初にエアブロー回路を設計し、製品がスライドから剥がれるように設定しました。また、エアブローの前にガス吸引を行うことで、ガスによる不良の発生も防止するようにしました。
エアー漏れの検出と対応:
回路の設計見直しの過程で、バキュームサイレンサーからのエアー漏れ音が大きいことが判明しました。これは、エアーがスライドに十分に伝わっていないことを示していました。この問題を解決するために、エアブローの流れを4方向から必要なスライドに集中させるように変更しました。
回路の再配置:
エアー供給の逆流を防ぐために回路を再配置し、エアーの供給量を調整しました。これにより、必要なスライドへのエアー供給が安定し、製品の変形を防止することができました。
結果と効果
改善策を実施した結果、冷却時間を45秒から25秒に削減することができ、サイクルタイムを72秒から52秒に短縮することができました。さらに、エアブロー回路の最適化により、不良率も1%にまで減少しました。
今後の展望
今回の改善策により、TPV材料を使用した成形工程でのサイクルタイム短縮が可能であることが確認されました。これにより、生産効率の向上が期待されます。しかし、さらなる改善の余地があることも事実です。今後は、エアブロー回路のさらなる最適化や、他の製品への応用を検討することで、さらなる効率化を目指していきたいと思います。
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